ビックリ建築、UFO型住宅〈フトゥロ〉を知ってますか? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ビックリ建築、UFO型住宅〈フトゥロ〉を知ってますか?

キューバ、ブラジル、メキシコ、フランスなど世界中の「ビックリ建築」を追いかけ、それをまとめた建築カルチャー本が出ました。なかでも注目は1968年フィンランドで生まれたUFO住宅〈フトゥロ〉。それはなぜ生み出されたのか? その秘密に迫ります。

フィンランド人建築家マッティ・スーロネンの設計で生まれたUFO住宅〈フトゥロ〉の模型。 © Matti Suuronen/Museum of Finnish Architecture
UFO住宅〈フトゥロ〉をご存知だろうか? 1968年フィンランドでつくられ世界中へ輸出されるも、プラスティック製だったがゆえに、1973年のオイルショックで生産中止に追い込まれ、この世から姿を消してしまったレジャーハウスだ。

雑誌『Casa BRUTUS』ではかつて、幾度となくこの〈フトゥロ〉を誌面で追いかけてきた。フィンランドまで行きこの住宅を設計した建築家にインタビューしたり(2001年4月号掲載)、日本に輸入された〈フトゥロ〉を見つけたり(2001年7月号掲載)。さらには小誌月刊化1周年記念のイベントで東京・赤坂で〈フトゥロ〉の実物を展示・公開した模様をお伝えした(2001年12月号掲載)。
日本に輸入された〈フトゥロ〉を、軽井沢で発見!のCasaBRUTUS報告記事(Casa BRUTUS 2001年7月号より)
軽井沢で発見された〈フトゥロ〉の詳細をリポートした(Casa BRUTUS 2001年7月号より)
フトゥロが生み出された1968年は、まさにスペース・エイジの真っただ中。この年、あの名作SF映画『2001年宇宙の旅』(監督:スタンリー・キューブリック)が公開され、翌年1969年にはアポロ11号が人類初の月面着陸に成功。1970年の大阪万博アメリカ館では月の石が展示され、それ見たさに日本人は長蛇の列をつくった。

「このUFO住宅は、宇宙に希望を抱き明るい未来を信じた時代に生み出されました。ですが実際の世の中では、冷戦は過熱しベトナム戦争は泥沼化、核問題、環境・エネルギー問題など地球規模の様々なひずみが露呈し始めた時でもありました。そんな混とんとした時代だったからこそ60年代~70年代カルチャーは、世の中を変えたいというパワーに満ち溢れ、今見てもとても魅力的です。事実、建築・デザイン・ファッション・音楽など様々な分野で、突き抜けたものが多く生み出されました。〈フトゥロ〉はそんな時代を象徴する貴重な実例なのではないでしょうか」(『世界のビックリ建築を追え。』著者:白井良邦氏)

驚くべきデザインの建築ばかりを集めた本『世界のビックリ建築を追え。』を見てみると、〈フトゥロ〉をはじめ紹介されている建築のほとんどが、60年代~70年代に生み出されたものばかりだ。そしてそのどれもが現実を打破し乗り越えようとする理念を秘め、力強いデザインで私たちに迫ってくる。
建築家アンティ・ロヴァグが1970年代から30以上に渡ってつくり続けていた南仏カンヌにある〈ゴーデ邸〉。SFに出てくる軟体宇宙生物のようだ。 photo_JP de Rodliguez Ⅲ
岡本太郎デザインの照明「生誕」が印象的な、黒川紀章設計の〈寒河江市庁舎〉(1967年完成)。メタボリズム建築の萌芽が感じられる。 photo_Shinichi Ito
今は壊されてしまった、東京・市ヶ谷にあった〈龍生会館〉(1966年完成)。生け花の龍生派本拠地とあって、華道をデザインに昇華させた突き抜けた感がすごい。 photo_Shinichi Ito
キューバの首都ハバナにある〈商務省ビル〉(1966年完成)。建物の正面にはキューバ革命後、チェ・ゲバラの顔が取り付けられた。 photo_Kazuya Morishima
新型コロナウイルスや地球温暖化など2020年に生きる私たちも、いま様々な危機に直面し問題を抱えている。でも、そんな時代だからこそ、なぜ「ビックリ建築」が生み出されたのかを知り、そこからパワーを得ることで、次の新しい価値観を生みだすヒントが得られるのではないだろうか?
右/アメリカでの〈フトゥロ〉の販売会社「フトゥロ・コープ」のパンフレット表紙。左/フィンランドの〈フトゥロ〉製造メーカー「ポルケム社」のパンフレット表紙。 ©️Matti Suuronen/Museum of Finnish Architecture
〈フトゥロ〉とは?
1968年、フィンランド人建築家マッティ・スーロネンによりデザインされたUFO住宅。レジャー用の小屋として開発され、トイレ・シャワー・キッチン・暖炉・寝室スペースが装備されている。FRP(繊維強化プラスティック)製で直径は8メートル。奇抜なデザインで人気を博し日本を含め世界中へ輸出された。しかし1973年のオイルショックで石油価格が高騰、生産中止に追い込まれた。1979年、〈MoMA〉(ニューヨーク近代美術館)で開催された『Transformations in Modern Architecture』展では丹下健三の建築などと共に〈フトゥロ〉が紹介された。

『WONDER ARCHITECTURE 世界のビックリ建築を追え。』

スイスで見つけたシュタイナーのオカルト建築や、カストロ議長のつくったキューバ独自のモダニズム建築、巨匠オスカー・ニーマイヤーのインタビューなど。日本を含む世界中から厳選したビックリ建築を収録。美しいビジュアルと文で見せる、今までになかった建築&カルチャー本です。白井良邦著、扶桑社刊。3,200円。

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