イタリアが誇る〈マセラティ〉で建築とアートを巡る、東京から2時間の旅。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

イタリアが誇る〈マセラティ〉で建築とアートを巡る、東京から2時間の旅。

美しくて、速い。ほどほどにではなく圧倒的に。〈マセラティ〉はイタリアの情熱と創造性とクラフツマンシップの極北だ。それがこのたび《フォーリセリエ》という新しいカスタマイズプログラムを開始した。その魅力を探るべく、新進のデザインとアートと建築が“めぶく”街、前橋の新名所へショートトリップ。

建築家・永山祐子が手がけた〈JINS PARK〉の美しいファサード。

〈マセラティ〉の特徴的なレーシングストライプと銅板を敷いたファサードが印象的な〈JINS PARK〉。
ファサードの意匠のモチーフとなったのは群馬県のほぼ中央に位置する象徴的な名山、赤城山。
ファサードデザインは、地元に根を下ろした運営をする店舗の姿勢とも共鳴する。
店内はエントランスの正面から大階段が伸びていく。メガネ売り場とベーカリー、休息できる場所が、間仕切りのないひとつの空間でつながっている。
〈JINS PARK〉のエントランス側に停車する〈マセラティ〉の《クアトロポルテ》。ボンネットのレーシングストライプは《フォーリセリエ・プログラム》による特別なペイント。
《トライデント》の愛称で知られる〈マセラティ〉のエンブレム。創業の地であるイタリア・ボローニャのマジョーレ広場に建つ、ネプチューン像から着想を得たというのは有名な話。
都心から首都高速を経て関越自動車道へ。〈マセラティ〉の《クアトロポルテ》はスムースに高速巡航を続ける。“4つ(クアトロ)”の“ドア(ポルテ)”というシンプルな名を冠したブランドを象徴する4ドアサルーンで、さらにその中でもハイグレードな「トロフェオ」というモデル。3.8リッターV8ツインターボという、いかにもスポーツカー然としたエンジンを積み、ひとたびアクセルを踏み込めば、独特の乾いた排気音をたてながらパワフルに加速した。

その一方で、乗り心地はあくまで快適。広々とした車内は最新のサスペンションシステムに支えられ、気密性も驚くほど高い。静謐で滑らかな乗り心地と、細部までデザインと職人技が行き届いたインテリアのためだろうか。まるでどこかのギャラリーやラウンジでソファに腰掛けているかのような印象すらある。というわけで、あっという間に群馬県前橋市へと到着。ちなみに、インターチェンジを抜けてスピードを緩めてからも、ドライブのエレガンスが損なわれることはなかった。全長5.27m、ホイールベースで3m以上という長躯でありながら、力強い動力と軽やかなステアリングでキビキビとコーナーを行く。ひとつ目の目的地はもうすぐそこに。

今春、オープンした〈JINS PARK〉に到着。青空に浮かび上がる銅板のファサードとひし形の構造が遠くからも目をひいた。設計したのは建築家・永山祐子。アイウエアブランドの〈JINS〉による、地域との共生を目指した新しいロードサイド店舗である。メガネはもちろん、新業態のベーカリーカフェ〈エブリパン〉では、地元の食材をふんだんに採り入れたパン(シナモン多めのシナモンロールが人気)やコーヒーを用意。さらに不定期で広い屋外スペースを利用した、ワークショップやマルシェを開催している。

周囲の壁をぐるりとガラスで囲んだ明るい店内。エントランスを入れば眼前には大階段があって、屋上のテラスにつながり空まで抜けていく。間仕切りの少ない店内はひとつながりの空間を形成し、各所に椅子や腰掛けも配置。オープンで寛いだ空気に満ちた、公園のような場所なのだった。

〈白井屋ホテル〉で話題の現代アートと遭遇。

ファサードを彩る、ローレンス・ウィナーのコミッションワーク。今年惜しくも逝去したコンセプチュアルアートの巨人の作品は、前橋市の新しいモニュメントだ。
ホテルの裏手に回ると、芝に覆われた土手のような構造のグリーンタワーが現れる。この中にベーカリーやコーヒーショップ、特別個室や8つの客室が入っている。左上の白い小屋はフィンランド式のサウナ。
ヘリテージタワーの吹き抜けに設置された、レアンドロ・エルリッヒのインスタレーション。この角度から見られるのは宿泊者だけ。
スペシャルルームのひとつ、《レアンドロ・エルリッヒ ルーム》。こちらは真鍮のパイプがモチーフになっている。広くはないが、アートに囲まれている感じはひしひしと。
グリーンタワーのデラックスルームの一室。現代アーティストの鬼頭健吾による作品が壁一面に広がる。
グリーンルームの頂上にあるのが宮島達男のインスタレーションを設置した小屋。デジタルカウンターを用いた代表的なシリーズ作品に囲まれながら、瞑想やサウナ後の安息ができる。
続いて向かったのは、こちらも前橋市内で昨年末に開業した〈白井屋ホテル〉。歴史ある老舗旅館のリノベーションをきっかけに、建築家や美術家、写真家やデザイナーなどが世界中から参画。都市活性化プロジェクトの斬新な事例として、あるいは類を見ないアートホテルとして注目を集めている場所だ。目印はファサードに掲げられた、ローレンス・ウィナーのコミッションワーク。タイポグラフィを用いた代表的なシリーズからの作品は、ここがアートに開かれた場所であることを宣言するかのよう。

施設は特長的な2棟からなり、その設計とデザインは建築家の藤本壮介が手がけている。築約45年のホテルのコンクリート構造をいかしながら、脱構築的に再生されたヘリテージタワーと、旧河川の地形を活かして“土手”を模した新造のグリーンタワー(前橋市のまちづくりのヴィジョンである“めぶく”の象徴ともなっている)がそれ。両棟で合計25の客室を備え、その中にはジャスパー・モリソンやレアンドロ・エルリッヒ、ミケーレ・デ・ルッキ、そして藤本がそれぞれ内装の一切を手がけたスペシャルルームのほか、気鋭のアーティストの作品を展示したバラエティ豊かな空間が用意されている。

ヘリテージタワーを上下に貫く吹き抜けには、レアンドロ・エルリッヒの巨大なインスタレーションも。『Lighting Pipes』と名付けられたこの作品は、この空間のために新たに創造されたもの。リノベーションに際して剥き出しとなったコンクリートの躯体を行き交うようにして、パイプの配管が柔らかく発光する。1階のロビーから見上げるだけでも不思議な心地がするが、宿泊者なら上層階から見下ろすことができる。このほかにも、デジタルカウンターを用いた宮島達男の『LIFE(Corps sans Organes)』シリーズを設置した小屋(フィンランド式サウナとのセットでの鑑賞も可能)など注目の施設がある。

〈マセラティ〉の画期的なサービス《フォーリセリエ》とは?

《フォーリセリエ》の《コルセ》を実装した《クアトロポルテ トロフェオ》。ロングノーズ、ショートデッキのスポーティでエレガントなフォルムに、クラシック風味のカスタマイズを。
フロントからリアまで、ボディの中央をレーシングストライプが貫いている。このデザインも《コルセ》ならでは。無論、カラーリングはいかようにも。
3つのサイドエアベントの赤いディテールは、最上位モデルである《トロフェオ》のしるし。ホイール内のブレーキキャリパーの色と揃えるのも洒落ている。《フォーリセリエ》ならホイールごと赤くすることもできてしまう。
Cピラー(後部の柱)にもトライデントのエンブレムがある。赤いストリームラインが加えられているのも《トロフェオ》だけ。
《クアトロポルテ トロフェオ》のインテリア。ベジタブルタンニンなめしのレザーをふんだんに用いており、肌触りもシートの座り心地も素晴らしい。《フォーリセリエ》ではステッチの色まで細かく指定することができる。
ヘッドレストにもトライデントの紋章が。シックなグレーのステッチはカスタマイズならでは。
建築とアートの刺激に満ちたショートトリップとなったが、芸術やデザインを体験するという行為は、美術館やギャラリーに限られたものではないということ。ホテルや公園のような店舗でこそ、じっくりと味わうことができるのかもしれない。自由に寛ぎながら、その空間に身をおくことで、新たに感じられることもある。

それは例えば、〈マセラティ〉のシートに身を沈めることで得られることとも似ている。スポーティな走りとラグジュアリーな乗り心地を、イタリアンデザインで両立し、エンジンからシートまでクラフツマンシップが宿る。あくまでクルマというプロダクトではあるが、創造性を引き出すという点では、これはもうひとつのアートのようでもある。

さらに〈マセラティ〉はオーナーのクリエイティビティを刺激するプランを用意している。「フォーリセリエ・プログラム」という特別なカスタマイズサービスだ。対象となるのは《クアトロポルテ》のほかスポーツクーペの《ギブリ》とSUVの《レヴァンテ》。シートレザーやダッシュボードの色、ホイールのデザインなどを限られた候補の中から選択するようなものではない。外装でいえばボディーカラーとその仕上げ、あるいはペイントワークを加えることもでき、ホイールやブレーキキャリパーの色も自在。さらに内装ではシートやダッシュボードやステッチの色に、レイアウトまで変更可能。その組み合わせは数千通りにもなるという。

「このプログラムによって〈マセラティ〉のユニークさや大胆さを感じていただけるはずです。私たちは、お客様に真っ白なキャンバスを提供し、色をつけるためのさまざまな道具を提供しています。そこにお客様がご自身で絵を描き、創造性を発揮して、夢を実現する手助けをしています。フルカスタマイズされたクルマは、かつてすべての車がクライアントの要望に応じてハンドビルドされていた時代の頌歌でもあり、新時代のラグジュアリーを象徴するものです」。 〈マセラティ〉のデザイン部門責任者、クラウス・ブッセは教えてくれた。

「真っ白なキャンバス」に向かい合い、想像の赴くままに組み合わせるのもいいが、選択肢はあまりに膨大。そこで2つのベースとなるテーマも用意している。「コルセ」「フューチュラ」がそれ。コルセはレーシングストライプを採用した外装からもわかるように、クラシックなレーシングカーのような佇まい。一方でフューチュラは革新的かつ実験的。これまでにはなかったような蛍光色をフィーチャーし、3層コーティングによる虹のようなウィンドーやエコフレンドリーなシート素材など、クルマの未来を見通したようなコレクションとなる。ブッセはそれぞれの特長をこのように解説する。

「コルセ・コレクションは、タイムレスなデザインを愛する人、ジェントルマンドライバー、あるいは、スピードとレースを愛する人のためのコレクションだとも言えます。このコレクションのインスピレーションは、〈マセラティ〉の歴史とレースの伝統に由来しています。このコレクションの2つの主役は、カラーとペイントです。カラーは、オフィチーネ・アルフィエリ・マセラティと、当時の各車両のボディに施された塗装作業からインスピレーションを得ており、1900年前半のユニークなカラーを再解釈したものとなっています。同様に、コルセコレクションで提供されるペイントは、ル・マン、バードケージ・ティーポ61、MC12ストラダーレなど、歴史的なレーシングカーや競技会にインスパイアされています。」

「一方でフューチュラ・コレクションは、ファッション、アート、カルチャーの最新トレンドに敏感で、かつ未来的な世界を夢見る、テクノロジーや新素材を愛するお客様に最適です。素材と色の両方の実験というコンセプトに基づき、インテリアデザイン、プロダクトデザイン、スポーツウェア部門の世界からインスピレーションを得た新素材の組み合わせを試すことができる、いわばスタイルの実験室です。 例えばBiolime(バイオライム)やGraphite Blue(グラファイト・ブルー)からインスピレーションを得た色合いや、極端な工業用塗料と干渉顔料を用いた、不透明なボディカラーの組み合わせなど、マセラティでは初めてみることができます。また、このコレクションにはツートンカラーの仕上げもあり、さらに思いがけない過激さを演出し、大胆で新しいグラフィックの分解を可能にしています。最も大切なのは、お客様がご自身のスタイルを見つけ、〈マセラティ〉とともに表現していただくこと。私たちはサルトのようにそれをお手伝いしたいのです」  (〈マセラティ〉デザイン部門責任者、クラウス・ブッセ)   

いずれにしても、《フォーリセリエ》は圧倒的に自由で、だからこそ創造性が問われるプログラムだ。それはつまりアートのようなクルマと、イタリアンデザインそのものと徹底的に向き合うこと。得難い体験になることは間違いない。

JINS PARK

群馬県前橋市川原町1-21-9。TEL027 260 1251。〈JINS〉月~金10:00~19:00。土・日・祝10:00~20:00。〈エブリパン〉月~金10:00~18:00。土・日・祝9:00~18:00。※営業時間等は変更する場合があり。駐車場は50台(無料)。

白井屋ホテル

群馬県前橋市本町2-2-15。TEL027 231 4618。旧白井屋をリノベーションしたヘリテージタワーと、旧河川の土手をイメージして新築されたグリーンタワーとで構成。東京・青山の〈フロリレージュ〉のオーナーシェフ・川手寛康氏が監修するメインダイニングも話題に。

マセラティ

1914年、イタリア・ボローニャでマセラティ家の3兄弟によって創業。20年代以降はモーターレースに参戦し、数々の記録と勝利を積み上げ、欧州屈指のモーターブランドとなった。かつては限られた顧客のための美しく特別なクーペやセダンで知られていたが、近年はスポーティでエレガントという伝統を守りながら、普遍性も備えたラインナップを展開。ハイブリッドやEVなどにも挑戦する革新性もあり、よりトータルなブランドとして成長を遂げている。
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