SPECIAL JAPANESE MODERN ARCHITECTURE 55
鳥取
037 東光園
Hotel Toukouen (1964)

1964年竣工。設計:菊竹清訓。皆生温泉の老舗旅館の新館として計画された。厳島神社の大鳥居を彷彿とさせる添え柱、貫をもつ6組の柱が大梁を上部まで持ち上げ、そこから客室である5階と6階2層の床を吊り下げるという大胆な構造をもつ。これは和室の客室内に大きな柱が出てしまうことを避けた解決策でもある。吹き抜けをもつエントランスロビーに現れるコンクリートの組み柱は緊張感のある空間を創出。最上階には、複雑な形状ながら日本的な印象を与える屋根が載せられ、古代木造建築にも通じる大胆で力強い構造によって、繊細な数寄屋風とは異なる日本的な表現を見せることから、日本独自のモダニズム建築の頂点のひとつとされる。また、菊竹が掲げた「柱は空間に場を与え、床は空間を規定する」という命題をよく表した作品としても知られる。庭園は彫刻家・流政之が作庭。