CULTURE
【本と名言365】辰巳芳子|「人はなぜ美味しいものを…」
September 30, 2023 | Culture | casabrutus.com | photo_Miyu Yasuda text_Mariko Uramoto illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。戦中・戦後の食糧不足を経験し、病に苦しむ人々へ介護食「いのちのスープ」を提案してきた料理家の辰巳芳子。美しさに透徹した目で、人が美味しさを求める意味を説く。
人はなぜ美味しいものを求めるのか? それはいのちを守りやすくするためだと思います。
辰巳芳子は食といのちに向き合い続けてきた料理家だ。戦時中、いのちをおびやかされ、また、食糧不足の恐ろしさを実感。その後、結核を患い、約15年にわたる療養生活が続いた。日々の食が生きる希望となったという。
料理家として独立したのは45歳の時。母で料理家の浜子から家庭料理を習得し、旧宮内省大膳寮に勤めていた加藤正之のもとでスープ作りの基礎を学ぶ。その後、脳血栓を再発した父のもとへ母と共にスープを作って病院に通うように。季節の素材を使った栄養たっぷりのスープは、嚥下障害を抱える父を支えた。“自然治癒力を高めるスープには食べる人の心の栄養になる”。そう強く感じた辰巳は父が死去した後、介護施設にスープを提供する活動をスタート。1996年、71歳で鎌倉の自宅でスープ作りを伝える「スープの会」を発足。2002年に発売した『あなたのために いのちを支えるスープ』は40万部を超えるベストセラーになり、料理本という枠を超えて社会現象になった。
辰巳が発信するのはスープの作り方にとどまらない。食がいのちをつなぐという力強いメッセージだ。辰巳自身、体調を崩し入院した際、出された米の質が悪かったためお粥が喉を通らず、体力が衰えてしまったという経験を持つ。「美味しいということは、人間にとってもっともわかりやすい美であり、美しいと感じたものが、力となって『いのち』を支えていく」(「慎みを食卓に〜その一例〜」NHK出版より)。
辰巳は、鍋の中の景色や黄金色に実った水田、大根おろしといった道具などに“美”を見出す。美しいという感動のなかにこそ、生きる力があると信じているからだ。
辰巳芳子は食といのちに向き合い続けてきた料理家だ。戦時中、いのちをおびやかされ、また、食糧不足の恐ろしさを実感。その後、結核を患い、約15年にわたる療養生活が続いた。日々の食が生きる希望となったという。
料理家として独立したのは45歳の時。母で料理家の浜子から家庭料理を習得し、旧宮内省大膳寮に勤めていた加藤正之のもとでスープ作りの基礎を学ぶ。その後、脳血栓を再発した父のもとへ母と共にスープを作って病院に通うように。季節の素材を使った栄養たっぷりのスープは、嚥下障害を抱える父を支えた。“自然治癒力を高めるスープには食べる人の心の栄養になる”。そう強く感じた辰巳は父が死去した後、介護施設にスープを提供する活動をスタート。1996年、71歳で鎌倉の自宅でスープ作りを伝える「スープの会」を発足。2002年に発売した『あなたのために いのちを支えるスープ』は40万部を超えるベストセラーになり、料理本という枠を超えて社会現象になった。
辰巳が発信するのはスープの作り方にとどまらない。食がいのちをつなぐという力強いメッセージだ。辰巳自身、体調を崩し入院した際、出された米の質が悪かったためお粥が喉を通らず、体力が衰えてしまったという経験を持つ。「美味しいということは、人間にとってもっともわかりやすい美であり、美しいと感じたものが、力となって『いのち』を支えていく」(「慎みを食卓に〜その一例〜」NHK出版より)。
辰巳は、鍋の中の景色や黄金色に実った水田、大根おろしといった道具などに“美”を見出す。美しいという感動のなかにこそ、生きる力があると信じているからだ。
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