ART
“非物質”に惹かれたイヴ・クラインの後世に与えた影響を探る|青野尚子の今週末見るべきアート
| Art | casabrutus.com | photo_IKEDA hiraku text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
青一色でオブジェを作ったり、火を使った絵画を制作していたイヴ・クライン。彼は戦後のアートの新しい形を切り開きました。彼と、現在に至るまで彼が他のアーティストに与えた影響について探る展覧会が開かれています。いま見ても新鮮な驚きがある展覧会です。
自ら開発した鮮やかな青の顔料「インターナショナル・クライン・ブルー」で知られるイヴ・クライン。早世した彼が活躍したのはわずか数年のことだった。その間にクラインは色彩が人の心理に及ぼす影響や、身体的な行為のあとを作品として残すこと、音や火など「非物質的なもの」を作品に取り込むことなど、現代アートにおける重要な概念を示している。円形の建物の中、家のように展示室が現れる〈金沢21世紀美術館〉はそんな彼の思考を辿るのにふさわしい。
たとえばイヴ・クラインの絵画では、青の他にも金や薔薇色が重要な意味を持つ。彼は、青は「空間」、金は「精神」、薔薇色は「生命」と、この3つの色が宇宙を構成する三原色であると考えていた。
金は自由に形を変えることができるけれど腐食したりすることはない、物質としての強さを持つ素材だ。会場には金沢で作られた金屏風も展示されている。金沢は日本の金箔生産量の99%を生産する、金の本場だ。イヴ・クラインは柔道を学ぶため1952年からおよそ1年半にわたって日本に滞在しており、金屏風を見たことがモノクローム絵画(一色のみで描かれた絵画)のインスピレーション源になったのでは、とも言われている。
金は自由に形を変えることができるけれど腐食したりすることはない、物質としての強さを持つ素材だ。会場には金沢で作られた金屏風も展示されている。金沢は日本の金箔生産量の99%を生産する、金の本場だ。イヴ・クラインは柔道を学ぶため1952年からおよそ1年半にわたって日本に滞在しており、金屏風を見たことがモノクローム絵画(一色のみで描かれた絵画)のインスピレーション源になったのでは、とも言われている。
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青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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