ARCHITECTURE
【京都・七条】丸福樓、河井寬次郎記念館…。レトロ建築を巡り、甘い手みやげを買う。|甲斐みのりの建築半日散歩
June 8, 2022 | Architecture, Culture, Food, Travel | casabrutus.com | photo_Ryumon Kagioka text_Minori Kai
2022年4月、京都七条で長い月日保管されていた旧山内任天堂社屋が、安藤忠雄の設計監修でオールインクルーシブのホテル〈丸福樓〉へと生まれ変わった。今回はホテルの滞在を兼ねて、民藝運動を代表する陶芸家・河井寬次郎の住居・陶房・登り窯を見学できる〈河井寬次郎記念館〉や〈開化堂カフェ〉を訪ねたり、界隈を散歩しながら買い物を楽しんだ。
●旧山内任天堂社屋が安藤忠雄の設計監修でホテル〈丸福樓〉に変身。
任天堂の創業家である山内家が大切に守り続けてきた歴史的建物で、長らく非公開だった旧山内任天堂社屋が、リノベーションを経てホテルに生まれ変わるというのをニュースで知ったのは、ちょうどこの連載が始まる2020年初頭頃。それから2年。2022年の4月に、とうとう開業の日を迎えると聞いて京都を目指した。
最寄りは京阪電鉄・七条駅。鴨川と高瀬川の間に位置する鍵屋町は、昔ながらの町家や商店建築が残る静かな町並みで、繁華街とは異なるゆったりとしたときが流れる。そこに1930(昭和5)年に建てられたのが、1889(明治22)年に花札やカルタの製造を始め、世界的なゲームメーカーへと発展を遂げた任天堂の本社社屋。表通りの正面玄関から北に向かって3棟が連なり、それぞれ、事務所棟、創業家である山内家の住居棟、倉庫棟として使用されていた。
最寄りは京阪電鉄・七条駅。鴨川と高瀬川の間に位置する鍵屋町は、昔ながらの町家や商店建築が残る静かな町並みで、繁華街とは異なるゆったりとしたときが流れる。そこに1930(昭和5)年に建てられたのが、1889(明治22)年に花札やカルタの製造を始め、世界的なゲームメーカーへと発展を遂げた任天堂の本社社屋。表通りの正面玄関から北に向かって3棟が連なり、それぞれ、事務所棟、創業家である山内家の住居棟、倉庫棟として使用されていた。
そこかしこにアール・デコ調の装飾がほどこされた鉄筋コンクリート4階建てのビルを設計したのは、京都に建築事務所を構えていた、増岡熊三と田中義光。サンドベージュのタイルを張り巡らせた外壁には、ところどころに幾何学模様の煉瓦や石材が。館内にも大理石やカラフルなタイルが贅沢に用いられ、格子窓のダークグリーンが空間全体を引き締めている。
ホテルに冠された〈丸福樓〉という名は、山内家の屋号〈丸福〉に由来する。プロデュースを手がけるのは、神戸〈オリエンタルホテル〉や奈良〈菊水楼〉をはじめ、地域性を活かしたホテルやレストランを運営する〈Plan・Do・See〉。既存棟2棟はオリジナルのディティールを蘇らせ、新棟は建築家・安藤忠雄により、コンクリート造りの新たな建物が誕生した。
全部で18室ある室内の調度品は部屋ごとに趣が異なり、新旧のデザインが過去から未来への物語を携えて響き合う。既存棟と新棟が融合した「丸福樓スイート」のテラスからは、清水寺など京都のまち並みを一望できるのも贅沢な限り。宿泊プランはオールインクルーシブで、夕食、朝食、客室ミニバー、ラウンジでのドリンクや軽食が宿泊料金に含まれるので、館内では時を忘れて自由にゆったり寛げる。
レシピ・内装・器・植栽に至るまで、料理家・細川亜衣さんが監修するレストラン「carta.」では、京都の旬の食材を使った夕食と朝食を提供。また、ラウンジではグラタンやうどんなどの軽食を味わえるのも心嬉しい。
丸福樓
京都府京都市下京区正面通加茂川西入ル鍵屋町342。 TEL 075 353 3355。1泊1室2名利用70,000円〜。部屋代のほか料理、飲み物などオールインクルーシブ。全18室(うち7室がスイート)。
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illustration Yoshifumi Takeda
甲斐みのり
かい みのり 文筆家。旅、散歩、甘いもの、建築など幅広い題材について執筆。その土地ならではの魅力を再発見するのが得意。
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