デザインのいいレストラン #3 紙管が波打つレストランに出かけませんか? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

デザインのいいレストラン #3 紙管が波打つレストランに出かけませんか?

レストランは単に美食のみを求めて行くところではなくなったようです。最新のレストランが提供するのは、今まで味わったことのない空間体験。このコラムでは東京に次々と誕生している「デザインのいいレストラン」を厳選し、ご紹介していきます。今回は、建築家・坂 茂が建築と内装を手掛けたフレンチレストラン〈ヴァン・サンテ〉。2面の大開口と、坂ならではの紙管使いが心地よい空間を生み出しています。

緑道側からレストランを見る。緑道からテラス、ダイニング、カウンターへと空間がシームレスに続く。春には満開の桜を見ながらの食事もできる。
紙管で覆われたダイニングエリアの一部壁面と天井。空調機もこの下にある。右下はベンチシート。想像以上に座りやすく、落ち着いて食事ができる。
直径120mmの紙管を積み重ねて、ダイニングとカウンターの間のパーティションにしている。一部をワインボトルの収納用にするなど、ワイン好きの坂ならではの工夫が。
木造ラーメン構造により、無柱の大空間を実現。道路に面した2面のガラス引き戸を開放すると、心地よい風が通り抜ける。
既製品のボール電球に、合板の傘をかけたオリジナルのペンダント照明。傘は坂のスタッフが手作りしたという。北欧テイストが好きなシェフも、これには大満足。
世田谷区の閑静な住宅街。春には美しい花を咲かせる桜並木の続く北沢川緑道沿いに、フレンチレストラン〈ヴァン・サンテ〉はある。窓を大きくとった軽やかな雰囲気に惹かれて建物に近づくと、そこには壁や天井で波打つ紙管が…。そう、ここは建築家・坂 茂が建築と内装を手掛けたレストランなのだ。

台所用のラップフィルムの芯を巨大化したような紙製の筒「紙管」を構造材や仕上げ材として使用した“紙の建築”で知られる坂。今年4月、パリ郊外にオープンした複合音楽施設〈ラ・セーヌ・ミュジカル〉の音楽ホールでも、天井や椅子に採用。災害支援にも積極的に取り組んでおり、先の熊本地震の避難所では、被災者のプライバシーに配慮した紙の間仕切りシステムを設営するなど、紙管を用いた支援活動を世界各地で行っている。

そんな坂が日本にいる間、好んで訪れる場所の一つがここ〈ヴァン・サンテ〉である。事務所スタッフとオーナーシェフの西尾大輔さんが知人だったことをきっかけに通い始め、今では常連に……。2015年にそれまで10年間営業していた代沢から、この場所に移転するにあたり、新店の設計を依頼されたときも快諾したという。
イカのレアソテー サフランソース1,300円。刺身でも食べられる新鮮な白イカの表面を少し炙って提供。生のプリプリ感と、炙った香ばしさの両方が楽しめる。サフランの風味が味わいに深みを演出。この日は、花ズッキーニのフリットを添えて。
黒毛和牛「ささみ」網焼き 粒マスタードソース2,800円。牛肉のササミとはバラ肉の一部、焼き肉で言うところの上カルビを指すという。ほどよいサシで食べ飽きない。粒マスタードを効かせた赤ワインベースのソースも旨みを引き出す。付け合わせは、契約農家から直送された無農薬野菜。その日の仕入れに応じて内容が変わる。
スフレチーズケーキ レモン風味とバニラアイス700円。レモンの果汁と皮の入ったスフレチーズケーキは甘さ控えめなので、さっぱりといただける。
できあがった建物は、緑道沿いの角地であることを活かし、道路に面した2面がガラス張り。引き戸で全面開放できるようにし、内と外がゆるやかに連続する心地よい空間を作りあげた。一方、閉じた側のダイニングの壁面には、紙管を用いたベンチシートを設置。紙管はそのまま壁から天井へと連なり、美しい曲線を描く。

ダイニングエリアと、カウンターそしてキッチンの間仕切りには、直径120mmの紙管を積層して使用。一部はワインボトルが収納できるようになっている。またダイニングでは、紙管を座面に使った椅子《カルタチェア》を採用するなど、小さな空間に坂の遊び心がギッシリ詰まっている。

「でも、最初に坂さんから『紙管を使いたい』と言われたときには、テクスチャーがまったく想像できずに困りました。結局〈大分県立美術館〉まで出かけて素材感を実際に試してみたんですが、思ったより随分としっかりしていて……。今となっては、他にはないこの空間にとても満足しています」とシェフは話す。2016年3月の移転リニューアルに際し、店名も〈サンテ〉から現在の〈ヴァン・サンテ〉に変更。ヴァンはフランス語でワインを意味するほか、「坂さんのお名前とのダブル・ミーニングにしています」という。
ダイニングからカウンター方向を見る。壁や天井に現れた構造材には、ベイマツの集成材を使用。木と紙の組み合わせが、温もりのある空間を作っている。
坂がデザインし、スイスのwb form社から販売されている《カルタチェア》をダイニングの椅子として使用。〈大分県立美術館〉でも採用されている。
ここで味わえるのは、軽やかで身体に優しいフレンチ。移転前からの付き合いになる静岡県富士宮市の契約農家から直送される無農薬野菜など、シェフが目利きした食材を丁寧に調理する。素材を活かす絶妙な火入れ、そしてそれに寄り添うよう調和するソース。決して奇をてらうことなく真摯に作られた一皿は、一口食べるとまた一口と食べ手の心をくすぐる。

「シェフがモットーとする“箸で食べるフレンチ”という言葉のように、とても洗練された人柄や料理は接しやすく、この場のコミュニティーに馴染んだマナーにアダプトされ、それをインテリア空間に実現した」とは坂。巨匠建築家の思いが詰まった空間で、彼が愛する料理をいただく。そこにvin(ワイン)があれば、言うことはない。

〈vin sante(ヴァン・サンテ)〉

東京都世田谷区代沢4-39-7
TEL 03 3419 2520。11時30分〜13時30分LO、17時〜21時LO。月曜休。ランチセット1,800円〜。ディナーコース4,000円〜。夜はアラカルトあり。フランスを中心に、アメリカ、スペインなど約30種が揃うワインはグラス700円〜、ボトル2,800円〜。

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