FOOD
小寺慶子のレストラン予報|武蔵小山〈Giovanni〉
『カーサ ブルータス』2019年12月号より
November 14, 2019 | Food | RESTAURANT FORECAST | photo_Kayoko Aoki
個性を貫いた美食コースに心を射抜かれるでしょう。
個性を突きつめた結果、陥りがちな没個性の罠。東京のレストランは多様化しているようでいて”既視感ゼロの店”を見つけるのは意外と難しい。だが、武蔵小山にオープンした〈Giovanni〉は、これまでに味わったことがない食体験を求める人にこそ訪れてほしい店である。住所、電話番号は一切非公開。完全シークレットな”美食天国”では店主が毎朝、豊洲に通って仕入れる極上の食材を使った料理を堪能することができる。ワインや台湾茶のペアリングを含む25,000円のコースには8~10皿が登場するが、そのすべてがスペシャリテと言い切れるほどの圧倒的なインパクトがある。マルサラ酒につけて官能的な風味を引き出したボタン海老に、大粒で旨み濃厚なN25のキャビアと魚介の出汁に心酔する冷製パスタ、馬肉の概念が変わるタルタルや〈浅草開化楼〉の麵を使った卵かけパスタなど、想像を超える美味がストレートに、激しく胸を打つ。ネタバレ厳禁の美食コースは店主の個性の塊。高い障壁を越えてでも味わうべき悦びがここにある。
ジョヴァンニ
住所、電話は非公開。不定休。4席。
小寺慶子
肉を糧に生きる肉食ライターとして様々な雑誌に執筆。レストランはもちろん、お取り寄せ肉も大好物。最近は、滋賀〈サカエヤ〉の此近江牛懐石頃に大感激。