FASHION
フリーダ・カーロにとって、着ることはメッセージでした。
『カーサ ブルータス』2019年3月号より
February 20, 2019 | Fashion, Design | a wall newspaper | photo_Nickolas Muray(portrait), Javier Hinojosa(items) text_Mika Yoshida & David G. Imber ©Diego Rivera and Frida Kahlo Archives, Banco de México, Fiduciary of the Trust of the Diego Rivera and Frida Kahlo Museums
本人が身につけていた衣装や小物が伝える激動の人生と、自己プロデュースの手法とは。
フリーダが逝去したのは1954年。夫の壁画家ディエゴ・リヴェラは、自分の死後15年間は彼女の遺品が人目に触れることを禁じたという。〈青い家〉と呼ばれる自邸で、フリーダが身につけたものや愛用品は生前のまま保管されている。長い封が解かれたのはディエゴが没した1957年から47年後、2004年のことであった。
フリーダは6歳でポリオを患い、18歳の時に巻き込まれた交通事故で大怪我を負う。終生にわたり後遺症に苦しみ続け、生涯30回もの手術を繰り返したと言われる満身創痍の人生は、品々にも見て取れる。たとえば左右の高さが異なるブーツの数々。彼女の右脚は、ポリオの影響で左脚よりも短かった。あるいは背骨損傷による激痛を緩和するための医療用コルセット。また、右脚の切断手術を受けたのち、使用することになった義足も、今回展示されている。
コルセットには政治的メッセージを込めた絵を自ら描き、義足が履くブーツも、鮮烈な色彩や絵柄が目を奪う。装いは、フリーダにとって個人、そしてアーティストとしての表現手段に他ならない。ドイツ系ハンガリー人の父と、スペイン系と先住民テワナ族の血を引く母をもつ彼女。民族衣装をまとうことは自身のルーツ、またメキシコという国のアイデンティティを確かめ、発信する行為であった。また同時に、広がった長いスカートに、ゆったりとしたブラウスは、不自由な肉体をカバーするという利点も持つ。
髪を結い上げて頭を小さくし、全身を三角形にバランス良く整え、りりしい眉を強調したアイコニックな姿は、見る者にパワフルで忘れがたいイメージを植えつける。彼女は自己プロデュース能力に長けた芸術家でもあったのだ。
『外観とはあてにならないもの』と題された本展では、遺品のほかフリーダの絵画や写真、またアメリカ先住民美術が多数公開される。写真家・石内都が2012年、〈青い家〉(現・フリーダ・カーロ美術館)で撮影した遺品の写真シリーズに感銘した人には、特に足を運んでほしい展覧会だ。
髪を結い上げて頭を小さくし、全身を三角形にバランス良く整え、りりしい眉を強調したアイコニックな姿は、見る者にパワフルで忘れがたいイメージを植えつける。彼女は自己プロデュース能力に長けた芸術家でもあったのだ。
『外観とはあてにならないもの』と題された本展では、遺品のほかフリーダの絵画や写真、またアメリカ先住民美術が多数公開される。写真家・石内都が2012年、〈青い家〉(現・フリーダ・カーロ美術館)で撮影した遺品の写真シリーズに感銘した人には、特に足を運んでほしい展覧会だ。
〈Brooklyn Museum〉
200 Eastern Parkway, Brooklyn, New York TEL 1 718 638 5000。11時〜18時(木〜22時)。月曜・火曜休。チケットは時間制で入場料20ドル。日にちのみ指定の場合は35ドル。