FASHION
かしゆかが出会い見つけた、〈Mame Kurogouchi〉の原点。
『カーサ ブルータス』2021年8月号より
July 8, 2021 | Fashion, Art, Design | a wall newspaper | photo_Satoshi Nagare text_Akane Maekawa
長野で開催する黒河内真衣子の展覧会へと駆けつけたPerfume・かしゆか。彼女がそこで見つけたものとは?
自身の経験や記憶に、自然や伝統の要素を織り交ぜ、日本の職人技と最新のテクノロジーを融合し生まれる〈Mame Kurogouchi〉のクリエイション。ファーストコレクションから10周年を迎えた今年、デザイナー・黒河内真衣子の出身地である長野で展覧会が開催中。ブランド初期からの大ファンで、一緒に旅をするほど仲良しというPerfumeのかしゆか。『カーサ ブルータス』2021年7月号で連載「古今東西 かしゆか商店」の買い付けの旅に誘われた黒河内が、今回はかしゆかを展覧会へと招待した。
黒河内真衣子 ようこそいらっしゃいました。
かしゆか ご招待ありがとうございます。毎シーズン展示会で服を見ているけど、美術館に展示されているのを見ると、また別の感動が押し寄せてくるね。
黒河内真衣子 ようこそいらっしゃいました。
かしゆか ご招待ありがとうございます。毎シーズン展示会で服を見ているけど、美術館に展示されているのを見ると、また別の感動が押し寄せてくるね。
黒河内 そう言ってもらえると、すごくうれしい。展覧会は、年代別ではなく、10年の創作を10のキーワードに分け、テーマごとに服と元になったアイデアや創作の過程をセットにして展示しています。この作業を通してあらためて気づいたのは、最初も今もやっていることは、変わっていないんだということ。気になることを書き綴ったノートがシーズンごとに1冊できるのですが、これもずっと続けているもの。今回は、10年で書き溜めた20冊のノートから360ページ分を抜粋して並べています。ノートは、デザイン画に辿り着く前のアイデアを書き留めたメモで、自分のすべてという感じ。見た夢の描写だったり、落書きのようなものもあれば、小さいデザイン画を並べて自分のビジネスマップを描いてみたり。
かしゆか まさにマメの頭の中ってことだよね。永遠に見ていたいぐらい楽しい。ここ「ねむいからムリ」って書いてあるし!(笑)
黒河内 ゆかちゃんはよく知っていると思うけど、私っていつも眠いじゃない?(笑)打ち合わせでも、「それは現実の話ですか?」と指摘されるぐらい、夢か現実かわからないから。でも、書き留めたものをひとつずつ紐解くことで頭の中を整理しているんだと思う。旅先で見つけた落ち葉だったり、古い生地や伝統技術を、自分の夢と現実の曖昧さの中に取り込み、どうやって服という形にするかを、この10年でやってきた。例えば、袈裟と継ぎ接ぎを着想源にした服では、実際に継ぎ接ぎを施すのではなく、薄いフィルムの糸と凧糸のような太い糸を一緒に織り込むことで、継ぎ接ぎのハンドステッチのように浮き上がらせてみたり。
かしゆか まさにマメの頭の中ってことだよね。永遠に見ていたいぐらい楽しい。ここ「ねむいからムリ」って書いてあるし!(笑)
黒河内 ゆかちゃんはよく知っていると思うけど、私っていつも眠いじゃない?(笑)打ち合わせでも、「それは現実の話ですか?」と指摘されるぐらい、夢か現実かわからないから。でも、書き留めたものをひとつずつ紐解くことで頭の中を整理しているんだと思う。旅先で見つけた落ち葉だったり、古い生地や伝統技術を、自分の夢と現実の曖昧さの中に取り込み、どうやって服という形にするかを、この10年でやってきた。例えば、袈裟と継ぎ接ぎを着想源にした服では、実際に継ぎ接ぎを施すのではなく、薄いフィルムの糸と凧糸のような太い糸を一緒に織り込むことで、継ぎ接ぎのハンドステッチのように浮き上がらせてみたり。
かしゆか 古いものや自然から得た発想を、現代のものに落とし込んで、新しい形にするというのがマメのすごい力だよね。頭の中にあって、でも現実にはまだない状態のものを再現しようとしているけれど、職人さんと何度も実験を繰り返すうちに、最初のアイデアからずれてしまうことはない?
黒河内 それはないかも。デザイン画から最終形の服はほぼ変わっていない。ノートに書き留めたように、絵を起こすまでの時間がとても重要。きちんと舵取りを決めてから、そこに向かっている。例えば刺繍は、針の刺し方ひとつで絵が変わってくる。でも私は技術者じゃないから、具体的な指示はできない。だからこそ、職人さんとのキャッチボールがすごく大切。最初はうまく伝わらないことも多かったけれど、今では指示をしなくても理解してくれるぐらい、あうんの呼吸で仕上げてくれます。
かしゆか 長年やってきたからこそ、表現したいニュアンスはこういうことなんだろうって、お互いにわかるんだね。それに、思わぬ角度からマメの要求がやってくるから、職人さんも燃えるんじゃないかな。
黒河内 それがものづくりのおもしろさだよね。職人さんとの協業と同じく、曲線を用いたパターンというのも初期から大切にしていることのひとつにあって。女性の身体にはどこにも直線はない。だからこそ、その身体を優しく包み込むようなカーブを大事にし、裸のときより立体的にきれいに見えるものを模索していて。
かしゆか マメの象徴的な部分だよね。柔らかさと曲線は。
黒河内 そこが、自分の中でも一番のベースの部分だと思う。
黒河内 それはないかも。デザイン画から最終形の服はほぼ変わっていない。ノートに書き留めたように、絵を起こすまでの時間がとても重要。きちんと舵取りを決めてから、そこに向かっている。例えば刺繍は、針の刺し方ひとつで絵が変わってくる。でも私は技術者じゃないから、具体的な指示はできない。だからこそ、職人さんとのキャッチボールがすごく大切。最初はうまく伝わらないことも多かったけれど、今では指示をしなくても理解してくれるぐらい、あうんの呼吸で仕上げてくれます。
かしゆか 長年やってきたからこそ、表現したいニュアンスはこういうことなんだろうって、お互いにわかるんだね。それに、思わぬ角度からマメの要求がやってくるから、職人さんも燃えるんじゃないかな。
黒河内 それがものづくりのおもしろさだよね。職人さんとの協業と同じく、曲線を用いたパターンというのも初期から大切にしていることのひとつにあって。女性の身体にはどこにも直線はない。だからこそ、その身体を優しく包み込むようなカーブを大事にし、裸のときより立体的にきれいに見えるものを模索していて。
かしゆか マメの象徴的な部分だよね。柔らかさと曲線は。
黒河内 そこが、自分の中でも一番のベースの部分だと思う。
かしゆか マメの服を着ると、女性らしく、品良く見える。最初に買った服は、2013年秋冬のレース付きの黒のミニワンピースだったけれど、最初からその印象は変わっていないよ。
黒河内 このときの曲線パターンは、最初のコレクションでつくったもので、現在もベースの形として使っています。同じく、初期からつくり続けているもので、PVCのバッグがあるんだけど、これは幼少期の長野の冬で見かけたガラスのように光る氷柱の記憶からなんです。持ち運べるガラスの鞄をつくりたいという気持ちが原点にあって。でも、10年前は、透けているバッグって、どう使うんですか? とよく聞かれた(笑)。
かしゆか 中のものが見えて恥ずかしいとか?
黒河内 中が見えることで、逆に私の中をきちんと知ってほしいという意図でつくったコレクションだったんだけどね。
かしゆか コレクションピースや服という形になっているけれど、これって特別なことではなく、すべてマメの日常なんだね。
黒河内 自分の日常には、こんなにも美しいものがあふれているんだって。そのありがたさや感動にずっと気づける人でいたい。
かしゆか 美しい服の後ろにあるストーリーを、葛藤も含めて見せてもらうと、マメの服を着るうえで、より愛情が増してくる。マメがどんな想いでつくったのか、持っている服をあらためて見返してみたくなってきたよ。
黒河内 このときの曲線パターンは、最初のコレクションでつくったもので、現在もベースの形として使っています。同じく、初期からつくり続けているもので、PVCのバッグがあるんだけど、これは幼少期の長野の冬で見かけたガラスのように光る氷柱の記憶からなんです。持ち運べるガラスの鞄をつくりたいという気持ちが原点にあって。でも、10年前は、透けているバッグって、どう使うんですか? とよく聞かれた(笑)。
かしゆか 中のものが見えて恥ずかしいとか?
黒河内 中が見えることで、逆に私の中をきちんと知ってほしいという意図でつくったコレクションだったんだけどね。
かしゆか コレクションピースや服という形になっているけれど、これって特別なことではなく、すべてマメの日常なんだね。
黒河内 自分の日常には、こんなにも美しいものがあふれているんだって。そのありがたさや感動にずっと気づける人でいたい。
かしゆか 美しい服の後ろにあるストーリーを、葛藤も含めて見せてもらうと、マメの服を着るうえで、より愛情が増してくる。マメがどんな想いでつくったのか、持っている服をあらためて見返してみたくなってきたよ。
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