FASHION
新世代写真家の旗手、ジェイミー・ホークスワースの原点とは?|石田潤のIn The Mode
August 8, 2019 | Fashion, Culture | casabrutus.com | photo_Tomo Ishiwatari text_Jun Ishida editor_Keiko Kusano
ファッション写真における新世代の旗手として注目されるジェイミー・ホークスワース。写真家としての彼の原点は、ドキュメンタリー写真だ。ホークスワースの処女作である「Preston Bus Station」の展覧会が始まった。
イギリス北部の地方都市、プレストンにあるバスターミナルで出会った人々を撮影したジェイミー・ホークスワースの写真シリーズ「Preston Bus Station」。プレストン・バスターミナルは、1969年に竣工したイギリスのブルータリズム建築を代表する建物でもある。この場所を大学の撮影実習で訪れたホークスワースは、そこで写真の魅力に目覚めることになる。
ロエベをはじめ数々のファッションブランドのキャンペーン写真を手がけ、ファッション写真の新世代のリーダーとして注目される彼の原点が、ドキュメンタリーであることは興味深い。ホークスワースはこの撮影から何を学んだのか、〈タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム〉での個展に伴い来日した彼に話を聞いた。
ロエベをはじめ数々のファッションブランドのキャンペーン写真を手がけ、ファッション写真の新世代のリーダーとして注目される彼の原点が、ドキュメンタリーであることは興味深い。ホークスワースはこの撮影から何を学んだのか、〈タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム〉での個展に伴い来日した彼に話を聞いた。
――ギャラリー内で円を描くように写真を展示しているのが印象的ですね。
プレストン・バスターミナルでは、駅の構内をぐるぐる回りながら写真を撮っていました。その感じを再現したくてこうした展示を行いました。このギャラリーは、ガラスのドア越しに中庭の通路が見えますが、駅で見たのと同じ形の白いタイルが壁面に使われているんです。偶然なのですが、写真の世界とつながっているように見えて良いですね。
――処女作である「Preston Bus Station」のシリーズは、あなたにとってどのような意味を持つものなのでしょう?
バスターミナルを最初に訪れたのは学生時代の2011年に2日間。その後2014年に1カ月、そして2015年にも写真を撮りに行きました。この駅で多くの時間を費やしました。プレストン・バスターミナルで、写真家としての基本的な感性が育まれたと言えます。ディテールを見ることの大事さや被写体となる人々へのアプローチの仕方を学びました。また、ターミナルには大きな窓があるのですが、そこから入ってくる光を通じて、光が人々をどう見せるかも知りました。
プレストン・バスターミナルでは、駅の構内をぐるぐる回りながら写真を撮っていました。その感じを再現したくてこうした展示を行いました。このギャラリーは、ガラスのドア越しに中庭の通路が見えますが、駅で見たのと同じ形の白いタイルが壁面に使われているんです。偶然なのですが、写真の世界とつながっているように見えて良いですね。
――処女作である「Preston Bus Station」のシリーズは、あなたにとってどのような意味を持つものなのでしょう?
バスターミナルを最初に訪れたのは学生時代の2011年に2日間。その後2014年に1カ月、そして2015年にも写真を撮りに行きました。この駅で多くの時間を費やしました。プレストン・バスターミナルで、写真家としての基本的な感性が育まれたと言えます。ディテールを見ることの大事さや被写体となる人々へのアプローチの仕方を学びました。また、ターミナルには大きな窓があるのですが、そこから入ってくる光を通じて、光が人々をどう見せるかも知りました。
――どのようにターミナルにいる人々にアプローチし、撮影したのですか?
見知らぬ人にポートレイトを撮らせてほしいと頼むのは、とても奇妙で興味深い経験です。トライ&エラーの繰り返しでしたが、人との関係性の作り方を学びましたね。今も人物を撮影する際に、この時の経験が生きていると思います。すぐにわかったことは、「すごく素敵な顔をしているね」などといきなり言うと、人々は怪訝に思うんです。「髪型がいいね」とか「ジャケットいいね」とか、その人に付随する何かを褒めて、バスターミナルを撮影するプロジェクトをしていると説明しました。僕の振る舞いや見た目、どのようなカメラで撮るのかといったこともポートレイト撮影には大きく作用します。寒い時期だったので、ジーンズにジャケットといった服装で、三脚付きの大きなカメラを持って撮影していました。プロフェッショナルに見える体裁です。それが人々に安心感を与えたのだと思います。
――ずっと同じカメラを使い、フィルムで撮影していると聞きました。
「マミヤ RB 67」と「ペンタックス67」の2つのカメラを使っています。マミヤは、構成や色彩を表現するのに適していて、ペンタックスはスピード感が必要とされる撮影に最適です。レンズも127mmを使い続けています。僕は写真を始めたのが遅いので、技術的には長けていません。だからシンプルに撮影したいんです。レンズを1種類にしているのも、撮影すべきかどうかの判断に集中したいからです。
見知らぬ人にポートレイトを撮らせてほしいと頼むのは、とても奇妙で興味深い経験です。トライ&エラーの繰り返しでしたが、人との関係性の作り方を学びましたね。今も人物を撮影する際に、この時の経験が生きていると思います。すぐにわかったことは、「すごく素敵な顔をしているね」などといきなり言うと、人々は怪訝に思うんです。「髪型がいいね」とか「ジャケットいいね」とか、その人に付随する何かを褒めて、バスターミナルを撮影するプロジェクトをしていると説明しました。僕の振る舞いや見た目、どのようなカメラで撮るのかといったこともポートレイト撮影には大きく作用します。寒い時期だったので、ジーンズにジャケットといった服装で、三脚付きの大きなカメラを持って撮影していました。プロフェッショナルに見える体裁です。それが人々に安心感を与えたのだと思います。
――ずっと同じカメラを使い、フィルムで撮影していると聞きました。
「マミヤ RB 67」と「ペンタックス67」の2つのカメラを使っています。マミヤは、構成や色彩を表現するのに適していて、ペンタックスはスピード感が必要とされる撮影に最適です。レンズも127mmを使い続けています。僕は写真を始めたのが遅いので、技術的には長けていません。だからシンプルに撮影したいんです。レンズを1種類にしているのも、撮影すべきかどうかの判断に集中したいからです。
――写真の暖かみのある色調が印象的ですね。
暗室で写真を現像していると、いつも実物よりちょっと冷たい色に上がるように思えたんです。イメージを楽観的に、被写体を褒め称えるように見せたかったので、自然に見える程度に暖かみを加えてプリントしています。暗室作業には時間をかけますよ。色がいかに作られるかを学びました。
――写真作品を制作する上で、最も大事にしていることはなんですか?
僕にとって写真は、いろいろなことに興味を抱くことの良いきっかけなんです。興味の対象はコンクリートでも木でも人でもなんでもいい。新しい世界に行くためのパスポートみたいなものですね。写真を始める以前は、何かを探検しに未知の土地に行くなんてことはしませんでした。自分の世界にとどまっていたんです。でも写真に興味を持ち始めた途端、汽車に飛び乗って知らない土地に行き、探検しながら写真を撮りました。写真は、好奇心を探求することを可能にしてくれた。好奇心を持ち続けること、それが一番大事なことです。
暗室で写真を現像していると、いつも実物よりちょっと冷たい色に上がるように思えたんです。イメージを楽観的に、被写体を褒め称えるように見せたかったので、自然に見える程度に暖かみを加えてプリントしています。暗室作業には時間をかけますよ。色がいかに作られるかを学びました。
――写真作品を制作する上で、最も大事にしていることはなんですか?
僕にとって写真は、いろいろなことに興味を抱くことの良いきっかけなんです。興味の対象はコンクリートでも木でも人でもなんでもいい。新しい世界に行くためのパスポートみたいなものですね。写真を始める以前は、何かを探検しに未知の土地に行くなんてことはしませんでした。自分の世界にとどまっていたんです。でも写真に興味を持ち始めた途端、汽車に飛び乗って知らない土地に行き、探検しながら写真を撮りました。写真は、好奇心を探求することを可能にしてくれた。好奇心を持ち続けること、それが一番大事なことです。
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illustration Yoshifumi Takeda
石田潤
いしだ じゅん 『流行通信』、『ヴォーグ・ジャパン』を経てフリーランスに。ファッションを中心にアート、建築の記事を編集、執筆。編集した書籍に『sacai A to Z』(rizzoli社)、レム・コールハースの娘でアーティストのチャーリー・コールハースによる写真集『メタボリズム・トリップ』(平凡社)など。