DESIGN
知られざるアルヴァ・アアルトに迫る展覧会。
October 8, 2018 | Design | casabrutus.com | photo_Petri Artturi Asikainen text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
北欧デザインの中でも特にファンの多いアルヴァ・アアルト。彼の造形の秘密を探る展覧会が開かれています。アアルトの家具でくつろげる「アアルト ルーム」もある、スペシャルな内容です!
フィンランドを代表する建築家、アルヴァ・アアルトが生まれて今年で120年。彼の建物やデザインは多くが50年以上前にデザインされたものだが、古びていない。その魅力はどこから生まれているのかを探求するのが本展だ。
展示は初期のスケッチなどから始まる。実現しなかった教会のプランなどを見ると、いわゆるアアルト・スタイルとは違う新古典主義的なデザインだ。アアルトにも「アアルト以前」があった、ということがわかる。
もうひとつ、面白いのが演劇「S.O.S」の舞台美術とポスター。舞台美術は表現主義的だし、ポスターにはアフリカの仮面のようなものが描かれている。もちろんアアルトが描いたものだ。ピカソがアフリカの仮面の造形力に驚いて画風を変えたのは有名だが、当時はヨーロッパのあちこちで非ヨーロッパ文明への関心が高まっていた。その後のアアルトを知る私たちからすると意外な作品だが、こんなところにも彼のルーツがある。
彼の出世作であり、フィンランド建築の方向性を決定づけた〈パイミオのサナトリウム〉の病室を再現したコーナーがある。通常、人は身体を起こして生活するが、ここは療養所だから大半の時間を横になって過ごす。そのため「天井に照明はつけない」「頭寒足熱となるようラジエーターの向きを調節する」「洗面台の水音をできるだけ小さくするため、ボウルに水が当たる角度を工夫する」といった配慮がされた。
〈パイミオのサナトリウム〉のベッドはスチールパイプだが、待合室やラウンジには薄い板を積層した合板の曲げ木の椅子が置かれた。次の展示室ではその曲げ木のレリーフと、オリジナルの家具が見られる。
〈パイミオのサナトリウム〉ではスチールのサッシュを使ったが、後の建築作品では木のサッシュやレンガ、ブロンズ板といった多様な素材を使った。林業はフィンランドの主要産業の一つだが、鉱物資源は乏しい。本展タイトル『アルヴァ・アアルト――もうひとつの自然』は自然の造形からヒントを得た彼のデザインを指しているが、自然の恵みを活用しようとする彼の態度を表しているとも考えられる。
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