Good TOOLS For Me|愛用のガラスのコップを教えてください。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

Good TOOLS For Me|愛用のガラスのコップを教えてください。

『カーサ ブルータス』2018年8月号より

毎回3人のゲストに愛用の日用品を聞くコーナー。今回は日々の暮らしに欠かせないガラスのコップです。

ガラス作家・西垣聡のカットグラス

宙吹成形の後、丁寧に研磨されたカットグラス。宝飾品のような美しい輝きは、独自の製法と高い技術の賜物。
カットグラスといっても、角ばったところのない滑らかな波目模様だから、唇にも持つ手にも優しい。装飾的だと思っていたが、よく見ると、円柱形のベースに行儀よく模様が繰り返し施されている、至って素朴な代物なのだ。夜、仕事が一段落してウィスキーを傾けるたび、刻まれた時間を想像しながら柔らかな凹凸に指を滑らせる。口当たりも指の腹に当たる感触も気に入っている。展覧会に出品されていると買い足し、食器棚には大中小が並んでいる。三つの大きさに合わせ、氷や水を加えて愉しむのも好い。

最近、ほぼ毎日聴いている古い時代のアルメニア音楽がある。小さな楽団の奏でるもので、音数が少なく繰り返しの多い静かな曲だ。遠くから聞こえてくるような、ゆったりとした打楽器の低音も心地好い。西垣さんのグラスから受けた印象と重なるものがある。

今晩改めてこの音楽を聴いてみよう。いつも通り、ウィスキーをグラスにたっぷりと注ぎ、ゆっくりいただくぞ。きっと、気持ちの好い酩酊状態を味わえるだろう。

猿山 修 デザイナー

さるやまおさむ 1966年生まれ。東京・麻布にて、デザイン事務所〈ギュメレイアウトスタジオ〉及び、古陶磁を含むテーブルウェア等を扱う〈さる山〉を主宰。