DESIGN
土田貴宏の東京デザインジャーナル|想像力に圧倒されるKIGIの個展
August 17, 2017 | Design | casabrutus.com | photo_Kenya Abe text_Takahiro Tsuchida
グラフィックを軸として、プロダクトやインスタレーションなどにも活動の範囲を広げてきたユニット、KIGI(キギ)。プロダクトブランド〈D-BROS〉の活動をはじめ、その多彩なクリエイションは広く知られている。現在、宇都宮美術館で開催中の彼らの大規模な展覧会「KIGI WORK & FREE」をリポートします。
アートディレクターの植原亮輔と渡邉良重が2012年に設立したKIGI。今回の「KIGI WORK & FREE」という展覧会名の「WORK」と「FREE」は、彼らが手がける2つの領域を表している。「WORK」とは主にクライアントのある、グラフィックやプロダクトのデザインを中心とする仕事のこと。一方「FREE」は、ふたりがプライベートワークと呼ぶ自主的な作品制作を含めた、より自由で制約のない表現活動のことだ。今回の個展では、この2つの面からKIGIの活動をとらえ、イマジネーションあふれる彼らの創造性に迫っていく。
展示の導入部、プロムナードギャラリーで涼しい音を響かせる《風贈り》。数字を印刷した紙は、毎日、KIGIから手紙で届く。
中央ホールに展示されている新作インスタレーション《風形》。KIGIの仕事の中で出たプリント済みの紙を素材に使い、風車を制作した。
展示の冒頭には、風をテーマにした2つの新作インスタレーションが設置されている。《風贈り》はガラスの風鈴が台に並び、いくつかの風鈴が天井から吊るされている。会期中、KIGIから美術館に手紙で届く紙片を風鈴につけ、学芸員が1日に1つずつ天井に吊るしていくというものだ。また《風形・ふうけい》は、KIGIがデザインの作業をする中で不要になった紙を風車にして、アクリルのボックスの中に並べた。一端には風車の反対側を向いた扇風機があり、それが作る風の流れによって風車が回りつづける仕組みになっている。二次元のイメージがプリントされた紙が、風車になることで三次元になり、動きを伴った作品へと展開する様子は、次元を超えて発想するKIGIの姿勢を表しているようでもある。
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illustration Yoshifumi Takeda
土田貴宏
つちだ たかひろ デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。
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