深澤直人が日本初個展で語る「AMBIENT」。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

深澤直人が日本初個展で語る「AMBIENT」。

ふと気づくと深澤直人がデザインしたものを使っている、という人も多いはず。その彼の個展が現在開催中です。タイトルは『AMBIENT 深澤直人がデザインする生活の周囲展』。意外なことに日本での個展は初めて、という本人に話を聞きました。

大小の《モディファイ スフィア》(パナソニック)のペンダントライトやフロアライトが惑星のように浮かぶ。左の椅子は《Roundish チェア》(マルニ木工)。
《モディファイ スフィア ペンダントライト》(パナソニック)。ありそうでなかった、完全な球体の照明。
大小の《モディファイ スフィア》(パナソニック)のペンダントライトやフロアライトが惑星のように浮かぶ。左の椅子は《Roundish チェア》(マルニ木工)。
《モディファイ スフィア ペンダントライト》(パナソニック)。ありそうでなかった、完全な球体の照明。
デザインとは、ものの形を作ること。確かにその通りなのだが、深澤直人は「ものと人の間」にあるものこそが重要だと考えている。展覧会タイトルの“AMBIENT”(アンビエント)はその「間」を象徴する言葉の一つだ。 字義では“環境の”、“周囲の”といった意味になる。

「アンビエントは、一般的には音楽などのジャンルで使われることが多い用語です。ここではものと人の間、ものの周囲に生まれる空気を指してアンビエントと言っています。世の中のデザインの概念ではものにフォーカスしていますが、僕はそうではなくてものから醸し出される雰囲気のほうが重要だと思う。デザインするときはいつもそういった雰囲気、ものと人の間にあるものについて考えています」
《グランデ パピリオ》とサイドテーブル《アワ》(ともにB&B ITALIA)。《アワ》は石けんの泡を持ち上げたような形から。右は深澤の代表作《壁掛式CDプレーヤー》(無印良品)。
《壁掛式CDプレーヤー》(無印良品)。換気扇のように紐をひっぱると少し”ため”を感じることができる、そのメカニズムの設計に苦心した。
《グランデ パピリオ》とサイドテーブル《アワ》(ともにB&B ITALIA)。《アワ》は石けんの泡を持ち上げたような形から。右は深澤の代表作《壁掛式CDプレーヤー》(無印良品)。
《壁掛式CDプレーヤー》(無印良品)。換気扇のように紐をひっぱると少し”ため”を感じることができる、そのメカニズムの設計に苦心した。
それはたとえば、「形」と「姿」の違いだと深澤は言う。彼はものに形ではなく、姿を与えようとしている。

「『彼女の姿を見た』とは言うけれど、『彼女の形を見た』とは言わないでしょう。“姿”は、そのものが発する何かが環境と溶けている様子です。『あの駅のホームの向こうで彼女の姿を見た』というと何かロマンチックな感じがしませんか。しかも姿に相当する英単語はない。姿は英訳できないんです」
バスタブ《サビア》(ボッフィ)。展覧会全体について深澤は「一見するとさっぱりして何もないように見えるかもしれないけれど、呼吸が静かになる感じを目指した」という。 photo_mikawa camera
“姿”にはアンビエント的なものが含まれているのだ。しかし、“姿”は作り込んだり、演出したりするとその価値を失ってしまう。

「佇んでいる彼女が周囲の視線を意識していたら、変になってしまう。ものでも『注目して』というデザインをしたらそれもおかしい。さりげなく、その場にいなくてはならない。声が大きければ注目を集めるわけではないんです。私たちは、みんながしゃべっている中で静かにしている人が気になったりするものでしょう」