土田貴宏の東京デザインジャーナル | 古典に導かれたコンスタンティン・グルチッチの新作。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS facebook-a facebook instagram line twitter youtube

土田貴宏の東京デザインジャーナル | 古典に導かれたコンスタンティン・グルチッチの新作。

家具やプロダクトの展示会を中心に、主に東京で見つけた新しいデザインのトピックを取り上げる「東京デザインジャーナル」。デザインジャーナリスト・土田貴宏が厳選してお届けします。

グルチッチが日本の家具メーカーと初めて取り組んだ椅子《DAHLEM》。特徴的な左右の板状のパーツは、ミニマルなアームレストの役目も果たす。98,280円~(アルフレックスジャパン TEL 0120 33 1951)。
アルフレックスジャパンはイタリアが原点のブランドで、洗練と高級感を備えた木の家具やソファのイメージが強い。一方、ドイツ人デザイナーのコンスタンティン・グルチッチは、プラスティックや金属を使った工業的なアプローチのプロダクトで知られている。両者がコラボレーションした椅子《DAHLEM》は、意外な組み合わせから起きた化学反応を思わせる。メーカーの経験値とデザイナーの実験精神がうまく噛み合い、コンテンポラリーなクラシックとして結実した。

現在、世界で最も注目されるデザイナーになったグルチッチは、キャリアの初期に木工家具の職人として修行を積んだ。当時の彼がよく参照したのが、《レッド&ブルー》などの古典的名作で知られるヘリット・トーマス・リートフェルトだったという。《DAHLEM》をデザインするにあたり、グルチッチはそんな職人時代に立ち返ったのだと語る。直角を多用して個々のパーツを無駄なく構成した姿は、確かにリートフェルトをはじめとするモダニズムの巨匠を思い起こさせる。ただし細部に注目すると、人の体に触れる部分ほど丸みを帯びるようにフォルムが整えてある。また第一印象を裏切るほどの、座った際の十分な安定感や快適さはアルフレックスジャパンのもの作りの底力だろう。生活に取り入れることを前提に完成度を高めた、グルチッチの代表作になりそうな一脚だ。
全体のフォルムは直線的に構成されているが、丸みを帯びたディテールが快適さを高めている。photo: Takahiro Tsuchida

土田貴宏

つちだたかひろ デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。