古今東西 かしゆか商店【薩摩切子の猪口】 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

古今東西 かしゆか商店【薩摩切子の猪口】

『カーサ ブルータス』2019年12月号より

日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回の目的地は鹿児島。かつて幻のガラス工芸と呼ばれ、35年前に復刻された美しい手仕事、薩摩切子と出会った。

色とりどりの薩摩切子が並ぶ〈薩摩ガラス工芸〉の店舗で。薩摩切子は幕末から30年ほどの間、薩摩藩の元でつくられたガラス工芸。東京の「江戸切子」と技法はほぼ同じだが、華やかな色彩とぼかし、複雑な文様が特徴。
ここ最近、江戸時代のモダンなデザインにどうしようもなく惹かれています。岩手の南部鉄瓶、神奈川の寄木細工、そして次に知りたくなったのが、鹿児島のガラス工芸・薩摩切子(さつまきりこ)でした。「切子」とはカットグラスのこと。幕末から明治にかけて薩摩藩でつくられた薩摩切子は、透明ガラスに色ガラスを重ねた「被(き)せガラス」の生地に、繊細なカットを施すことで美しいデザインを生む手仕事です。
Buying No.21【 薩摩切子の猪口 】 幕末の薩摩で生まれたきらびやかなガラス工芸。
「幕末の名君・島津斉彬は、西洋文化を取り入れて多くの事業を興しました。そのひとつがガラス製造。日本で最初の赤いガラスにも成功したんですよ。ただ、当時の薩摩切子は30年ほどで廃れてしまい、現存品も百数十点のみだとか」

と話すのは、〈薩摩ガラス工芸〉の有馬仁史さん。そんな"幻のガラス”を1985年に復刻させたのが、こちらの工場です。建物内では、赤、藍、黄、紫、緑などさまざまな色の被せガラスづくりから磨き仕上げまで、すべてを手がけているのですが、中でもガラスをカットする工程がすごい。簡単な下描きの線を引いたグラスを、高速回転するダイヤモンドホイールに当て、表面の色ガラスを削り取っていく……と、キリリと精緻な文様が少しずつ少しずつ浮かび上がってきます。
華やかな色が薩摩切子の特徴。
色ガラスの厚みをカットして生む「ぼかし」は薩摩切子特有の技。
「薩摩切子の特徴は、複雑な文様。七宝文などの伝統柄も現代の文様もありますが、それらを組み合わせて華やかな意匠を表します」と有馬さん。工場では江戸時代のデザインを復刻した猪口やグラスもつくっていて、それが驚くほどモダンで新鮮。カットも形も凝りに凝っています。薩摩の人ってお洒落だったんだな。しかも昔は棒ヤスリで文様をつけていたので、小さな器ひとつに1か月以上かかったんですって。どんなに手間と時間をかけてでも、この文様や色を生み出したい……美しいものに恋焦がれた職人さんの思いが伝わってきます。

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