「デザインって何だ?」近現代の名作と対峙する展覧会。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

「デザインって何だ?」近現代の名作と対峙する展覧会。

イサム・ノグチの《あかり》やクリストファー・ドレッサーの《ガーデン・チェア》など〈東京国立近代美術館〉が30年以上かけて集めてきた工業&グラフィックデザインのコレクション展が5月21日からスタート。

クリストファー・ドレッサー《ガーデン・チェア》1867年 東京国立近代美術館蔵
〈東京国立近代美術館〉の分館として1977年に誕生した〈東京国立近代美術館工芸館〉は国内で唯一国立の工芸を専門とする美術館。陶磁やガラス、漆工や木工などの工芸品はもちろんのこと、192点の工業デザイン、776点のグラフィックデザインも収蔵している。5月21日からスタートする展覧会『デザインの(居)場所』ではコレクションの中からデザイン作品に焦点を当て、選りすぐりの約120点紹介。人や場所、状況によってその定義や概念がさまざまに変化するデザインを、国境、領域、時間という3つのカテゴリに分けて改めて考えようとする試みだ。

まずは、世界の近代デザインの歴史を紐解きながら、国ごとのデザインの思想の違いを見比べる。インダストリアルデザイナーの先駆者として知られるクリストファー・ドレッサーの《ガーデン・チェア》や、アールデコ様式の家具をデザインしたことで有名なピエール・シャローの《鍛鉄製腰掛》などを並べ、イギリスの産業革命やフランスの装飾様式、ドイツの美術学校バウハウスが提唱した規格化など、国ごとのデザイン様式や思想の違いを浮き彫りにする。
ピエール・シャロー《鍛鉄製腰掛》1930-39年頃 東京国立近代美術館蔵
次に、デザインの領域について。“光の彫刻” として有名なイサム・ノグチの照明シリーズ《あかり》や、陶芸家の富本憲吉が手がけた日常の器《白磁珈琲器》を展示。これらを展示することで、デザインはさまざまな芸術領域と影響し合っていること、美術と実用という二つの領域をまたぐ作品があることがわかる。また、今回はエンツォ・マーリがイタリアの日用品ブランド〈ダネーゼ〉社から発表した陶磁器シリーズ《SAMOS》も登場。一つずつ手作業で制作された全21種類の器が公開されるのは、約30年ぶりだ。

最後は、デザインの時間について。柳宗理の《バタフライ・スツール》や森正洋の《G型しょうゆさし》といった長年親しまれるデザインがある一方で、それらがリリースされる際に制作されたポスターは一定の期間を過ぎると役目を終える。そういったポスターを提示し、デザインの時間について考察する。
 ちなみに〈国立近代美術館〉で開催された初めてのデザインの展覧会は1953年に開催された「世界のポスター展」。当時出品された今竹七郎や伊東深水らのポスター5点もあわせて展示し、当時の様子を振り返る。
グラピュ《未亡人(ピエール・コルネイユの演劇)》1989年 東京国立近代美術館蔵
〈東京国立近代美術館工芸館〉は明治洋風煉瓦造りの建物を谷口吉郎によって美術館仕様に改修したもの。スレート葺に復元された屋根や正面ホールに設置された両袖階段など往時の重厚な装いを見られる貴重な建物だが、2020年には美術館としての役目を終える。〈東京国立近代美術館工芸館〉という名前はそのままに、石川県金沢市へ移転。今展は東京で近現代の重要な工芸・デザイン作品を見られる貴重な機会となる。

所蔵作品展『デザインの(居)場所』

〈東京国立近代美術館工芸館〉
東京都千代田区北の丸公園1-1。5月21日〜6月30日。10時〜17時(入館は閉館30分前まで)。月曜休。250円。