CULTURE
写真家ドアノーが撮った、音楽が流れる街パリ。
January 4, 2021 | Culture, Art | casabrutus.com | text_Mari Matsubara editor_Keiko Kusan
パリの市井の人々を捉えた作品で有名な、フランスの巨匠写真家ロベール・ドアノー。彼の音楽的感覚に富んだ作品を集めた展覧会『写真家ドアノー/音楽/パリ』が、2021年2月5日より、東京・渋谷の〈Bunkamura ザ・ミュージアム〉で開かれます。
ロベール・ドアノーという名前にピンと来なくても、その写真を目にしたことがある人は多いのではないだろうか。かの有名な作品《パリ市庁舎前のキス》は、大きく引き伸ばされて東京都写真美術館の巨大な外壁を飾り、過去何度も日本国内で展覧会が企画されてきた。そういった意味で、ドアノーは日本で最も知られたフランス人写真家の一人と言ってもいいだろう。一方では、日本人にとっての“パリの下町ってこんなところ”というイメージを形成した人とも言える。
今回の展覧会は、ドアノーが生涯撮り続けた作品の中から音楽に焦点を当て、シャンソン歌手やミュージシャン、街の流しの唄い手、ジャズやオペラのスターなどを捉えた写真約200点で構成される。
今回の展覧会は、ドアノーが生涯撮り続けた作品の中から音楽に焦点を当て、シャンソン歌手やミュージシャン、街の流しの唄い手、ジャズやオペラのスターなどを捉えた写真約200点で構成される。
パリに一度でも行ったことがある人なら、街に音楽が溢れているのを実感したに違いない。地下鉄車両内のアコーディオン弾き、地下通路で音楽を奏でる管弦楽カルテット、カフェやレストランを流す歌手、夏至の日に夜通し行われるフェット・ド・ラ・ミュージック(音楽祭)。パリにはチケットを買って鑑賞する音楽ではない音楽が、路上のあちこちに存在する。
ドアノーが街を歩き回って漁った当時のイメージに一瞬、郷愁を覚えるものの、その断片なり印象なりがあまり変わることなく、60年以上経った現代のパリにも実在していることに驚かされる。木村伊兵衛の銀座はもうどこにもないが、ドアノーのパリはかすかに、確かに残っているのだ(余談だが、木村伊兵衛は写真集『パリ』を発表しており、渡仏した際にドアノーの案内でパリを撮影した)。
展覧会の監修はドアノーの孫娘で、2016年に映画『パリが愛した写真家ロベール・ドアノー〈永遠の3秒〉』を監督したクレモンティーヌ・ドルディル。時を超えて輝きを放ち続ける写真には、多くの日本初公開作品も含まれる。コロナ禍で海外旅行がままならぬ今、この展覧会が、ひとときパリの残影に浸らせてくれることだろう。
ドアノーが街を歩き回って漁った当時のイメージに一瞬、郷愁を覚えるものの、その断片なり印象なりがあまり変わることなく、60年以上経った現代のパリにも実在していることに驚かされる。木村伊兵衛の銀座はもうどこにもないが、ドアノーのパリはかすかに、確かに残っているのだ(余談だが、木村伊兵衛は写真集『パリ』を発表しており、渡仏した際にドアノーの案内でパリを撮影した)。
展覧会の監修はドアノーの孫娘で、2016年に映画『パリが愛した写真家ロベール・ドアノー〈永遠の3秒〉』を監督したクレモンティーヌ・ドルディル。時を超えて輝きを放ち続ける写真には、多くの日本初公開作品も含まれる。コロナ禍で海外旅行がままならぬ今、この展覧会が、ひとときパリの残影に浸らせてくれることだろう。
『写真家ドアノー/音楽/パリ』
〈Bunkamura ザ・ミュージアム〉東京都渋谷区道玄坂2-24-1。2021年2月5日〜3月31日(3月20日、21日、27日、28日のみオンラインによる入場日時予約あり)。10時〜18時(金・土曜〜21時、入館は30分前まで)。会期中無休。TEL 050 5541 8600(ハローダイヤル)。入館料1,500円。
ロベール・ドアノー
1912年、パリ郊外ジャンティイ生まれ。自動車メーカー〈ルノー〉のカメラマンとして活動したのち、フリーランスとして独立。雑誌『ヴォーグ』や『ライフ』でファッション写真を始めとした多くの写真を発表。1994年没。ロベール・ドアノー 《セルフポートレート》ヴィルジュイフ 1949年 ©Atelier Robert Doisneau/Contact。