焼き物を擬人化した漫画『やきもんロワイヤル』って? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

焼き物を擬人化した漫画『やきもんロワイヤル』って?

『カーサ ブルータス』2020年11月号より

九谷に伊万里、美濃、備前。日本を代表するあの焼き物を、擬人化しちゃった漫画が話題です。

現在のメインキャラは九谷焼・美濃焼・備前焼・伊万里焼の焼器霊(やきもん)と、彼らが暮らす焼物館の主・炎堂クレイ。次第に焼き物の魅力にハマっていくクレイは作者・竹谷さんの分身的存在。
焼器霊と書いて「やきもん」と読む。日本の焼き物を擬人化した『やきもんロワイヤル』は、焼き物の精霊が住む館が舞台の、ホロリもバトルも嫉妬もありの物語。『月刊モーニング・ツー』(講談社)連載漫画の単行本化を記念し、作者の竹谷州史さんと監修の橋本麻里さんに話を聞いた。
竹谷州史(以下竹谷) 始まりは、神様や精霊のような存在と人間との感覚のズレを笑うコメディーを描きたいと思ったこと。で、テーマを何にしよう、焼き物はあまり描かれていないかも……と調べ始めたら面白くて面白くて、焼き物の沼にハマッたんです。とはいえ僕自身は焼き物初心者。歴史や細部の表現をチェックしていただく監修を橋本さんにお願いしました。

橋本麻里(以下橋本) 歴史や特徴を知る学習マンガ的な要素もありますしね。主役は焼き物の精霊・やきもんですが、それぞれのキャラはどう決めたんですか?

竹谷 純粋に人気のある焼き物を4つ選び、備前焼は質実剛健で武骨、美濃焼は親しみやすい、みたいな個性を煮詰めていきました。やきもんと人間の間にはペットと主人のような関係があると思ったので、主人の愛情を期待する態度の違いも描き分けた。伊万里は愛が深いゆえ愛情に飢えがち、とか。

橋本 伊万里焼はかつて輸出磁器として栄華を極めた焼き物だから、そのプライドを強調した拗らせキャラだ、と。かわいいヤツ(笑)。
【伊万里焼】佐賀・長崎界隈。17世紀に輸出され、欧州の王侯貴族に愛された高級磁器の祖。プライド高めのキャラはいろんな意味でワレモノ注意。
伊万里焼。出典:Alamy/PPS通信社
【備前焼】岡山県界隈。釉薬も絵付けもなく手触りのよさが身上。実用品として優れた焼き物の精霊は、善人だがちょっとズレてる武闘派キャラ。
備前焼。出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)
【九谷焼】金沢・加賀。色彩豊かで絵画的。アニメとのコラボなど現代文化との親和性も高い色絵磁器を、美形かつマッドサイエンス的キャラに。
九谷焼。出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)
【美濃焼】岐阜県界隈。戦国の世に生まれた器の破格な存在感と日常の器としての親しみやすさを併せ持つ。キャラは柔和で温厚。でも能天気。
美濃焼。出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)
竹谷 ちなみにやきもんは精霊なので、性別を超えた存在です。

橋本 ものに精霊が宿るという認識が日本でフィクションとして享受されるようになったのは、貨幣経済が発達して庶民の持てるものが増えた室町時代以降。絵巻物にも描かれた日用品や道具の精霊「付喪神(つくもがみ)」もそのひとつですね。

竹谷 特に焼き物は、壊れやすいから大事に使ってあげたいという愛情も抱きやすいし、ドラマが生まれやすいんだなと感じています。

橋本 まさにその通りで、焼き物は使うもの、使うことで生活が豊かになるものだと知ってほしい。日本には各地の風土が生んだ良い焼き物がたくさんあるのだから。

竹谷 僕はまだデパートの焼き物売り場が俄然楽しくなったレベル。でもそんな些細なことで毎日ワクワクしてる。この漫画が読者のそういうきっかけになるといいな。
橋本さんの副読コラム「やきものこぼれ話」も必読!
公式ウェブサイトでは橋本さんによる副読本的コラム「やきものこぼれ話」も連載中。歴史や背景を深く知ると、焼き物の世界がもっと面白くなる。

竹谷州史(たけやしゅうじ)

岩手県在住の漫画家。『やすらかモンスターズ』(集英社)、『astral project 月の光』(KADOKAWA/エンターブレイン)など。

橋本麻里(はしもとまり)

美術ライター/編集者。公益財団法人永青文庫副館長。漫画好き。『チェーザレ〜破壊の創造者』(講談社)など漫画に協力も。
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