VEHICLE
Chill CARS|生活に根ざした、日用品としての素朴なクルマ。
『カーサ ブルータス』2018年8月号より
| Vehicle | Chill CARS | photo_Futoshi Osako text_Fumio Ogawa illustration_Daijiro Ohara
《フィアット・ヌオーバ500(チンクエチェント)》は、1957年に発売され、比較的安価で、かつ狭い路地でも走れるコンパクトさが高く評価され、イタリア中を埋め尽くした。その後継として72年に発売されたのが《126》だ。
《フィアット・ヌオーバ500(チンクエチェント)》は、1957年に発売され、比較的安価で、かつ狭い路地でも走れるコンパクトさが高く評価され、イタリア中を埋め尽くした。その後継として72年に発売されたのが《126》だ。
シャシーやサスペンションシステム、直列2気筒エンジンといったエッセンシャルな部分は《チンクエチェント》の流用で作られた。コンセプトも同様で、直線定規を使って《チンクエチェント》をデザインし直したともいえるスタイルだ。一説によると、《チンクエチェント》の設計者ダンテ・ジアコーザが同車を手がけていた際、「こんなのもありかな」と描いてみたものの棚上げとされていた案がベースなのだとか。
しかし、《126》はもちろん単なる焼き直しではない。傾斜のついたリアは《チンクエチェント》以上の躍動感を生んでいるし、ボディ各所の微妙なカーブが独特の温かみを感じさせる。87年からはポーランドに生産が移され、ボディはハッチバックとなる。時代に合わせ、少しずつ進化したのだ。
クルマ未満のクルマ、と《チンクエチェント》や《126》を評してイタリア人は言う。靴のような日用品だったからだ。
快適性や静粛性、そして自動運転と言われる昨今でも、この素朴なクルマの魅力は薄らいでいない。「お金のない若者にも移動の自由を」とした設計者の意思ゆえだろう。生活に根ざした骨太のポリシーは揺るがない。その好個の例だ。
シャシーやサスペンションシステム、直列2気筒エンジンといったエッセンシャルな部分は《チンクエチェント》の流用で作られた。コンセプトも同様で、直線定規を使って《チンクエチェント》をデザインし直したともいえるスタイルだ。一説によると、《チンクエチェント》の設計者ダンテ・ジアコーザが同車を手がけていた際、「こんなのもありかな」と描いてみたものの棚上げとされていた案がベースなのだとか。
しかし、《126》はもちろん単なる焼き直しではない。傾斜のついたリアは《チンクエチェント》以上の躍動感を生んでいるし、ボディ各所の微妙なカーブが独特の温かみを感じさせる。87年からはポーランドに生産が移され、ボディはハッチバックとなる。時代に合わせ、少しずつ進化したのだ。
クルマ未満のクルマ、と《チンクエチェント》や《126》を評してイタリア人は言う。靴のような日用品だったからだ。
快適性や静粛性、そして自動運転と言われる昨今でも、この素朴なクルマの魅力は薄らいでいない。「お金のない若者にも移動の自由を」とした設計者の意思ゆえだろう。生活に根ざした骨太のポリシーは揺るがない。その好個の例だ。
