FASHION
名作柄を混ぜたらどうなる? 新星デザイナー富永航の“プレイフル”なマリメッコができるまで。
August 31, 2021 | Fashion, Design | casabrutus.com | text_Mio Koumura editor_Keiko Kusano
60年代にマイヤ・イソラが生んだ名作パターン「ウニッコ」と「ロッキ」。マリメッコを代表する2つのパターンを使って、日本の新星デザイナー富永航が再解釈したコレクションが自由でプレイフル。その制作過程を聞きました。
マリメッコが創立70周年を記念してスタートした、若きクリエイターがブランドを再解釈するカプセルコレクション「マリメッコ コークリエイテッド」。2021年に全4回発表される同コレクションの3人目のクリエイターに、初の日本人デザイナーとして富永航が選ばれた。マイヤ・イソラが生んだ名作パターン「ウニッコ(ケシの花)」と「ロッキ(かもめ)」を題材に制作したコレクションは自由で奇想天外な組み合わせにもかかわらず、色やパターンのバランスが新鮮だ。富永航とはどんな人物なのか? その制作過程を聞いてみた。
富永は武蔵野美術大学在学中の20歳の時に、交換留学制度を通じて初めてフィンランドを訪問。留学先の学校ではテキスタイルを専攻しており、「(フィンランドで)テキスタイルを学びはじめたのがデザイナーとしての起点。ちょうど映画『かもめ食堂』が公開された2年後くらいで、北欧ブームが熱を帯びていた時でした。もちろんマリメッコのことは知っていたけれど、実際にそこに住んで意識してみると日本人デザイナーも多いし、70-80年代のヴィンテージの柄も興味深くて。今になって一緒にコレクションを作ることができたのは、とても嬉しかったです」 と振り返る。
「コークリエイテッド」の製作に取り掛かったのは昨年3月。カラーパレットはメインコレクションのテーマ「自然との共生」と連動するようにアースカラーをベースに、「ウニッコ」と「ロッキ」、そして色を”カモフラージュ”するようにミックスさせることから始めた。
「コークリエイテッド」の製作に取り掛かったのは昨年3月。カラーパレットはメインコレクションのテーマ「自然との共生」と連動するようにアースカラーをベースに、「ウニッコ」と「ロッキ」、そして色を”カモフラージュ”するようにミックスさせることから始めた。
大きなポケットがアイコンのカウリスジャケットや、羊飼いの伝統衣装に着想を得たホフトニシドレス、ミリタリーのディテールを落とし込んだホペアシニシャツなどのアイコニックなアイテムは、大柄のパターンを大小させながら、黒いウニッコにオリーブカラーのロッキという控えめなカラーリングで仕上げた。
「日本で”自然”と言うと、ほっこりとしたものづくりが多いのですが、それがリアルに感じられず僕は苦手で。力強くもあり、自然に馴染むことに重点を置き、男性にも、働くシーンにも選んでもらえることを目指しました」。
また、 「マリメッコでは生地はどこを使ってもいいという考え方。僕も同じで、自分のコレクションのテキスタイルを作る時は同じ柄をリピートして使います。その方が無駄がないですし、その偶然性にも個性が生まれます」と聞けば、ジャケットもシャツも柄の出方でそのものの表情が変わることが改めて興味深く映る。
「日本で”自然”と言うと、ほっこりとしたものづくりが多いのですが、それがリアルに感じられず僕は苦手で。力強くもあり、自然に馴染むことに重点を置き、男性にも、働くシーンにも選んでもらえることを目指しました」。
また、 「マリメッコでは生地はどこを使ってもいいという考え方。僕も同じで、自分のコレクションのテキスタイルを作る時は同じ柄をリピートして使います。その方が無駄がないですし、その偶然性にも個性が生まれます」と聞けば、ジャケットもシャツも柄の出方でそのものの表情が変わることが改めて興味深く映る。
自身初となるホームコレクションでは絵画のように仕上げたいというアイデアから、ロッキの上に大きなウニッコを大胆に配置した1枚絵のような構図を、ベッドカバーやクッションカバーなどに落とし込んだ。この柄はテーブルウェアにも派生し、カップやプレートなどのアイテムも加わった。
ケシの花をモチーフにした具象的なウニッコと、かもめに着想しながらも抽象的な表現で描きだしたロッキ。相反するモチーフに富永は、 「昔から二項対立に存在するものが混ざり合うことに興味を持っていたように思います。哲学が好きでヘーゲルの本で弁証法(相反する物事から新しい考えを生み出すこと)を知り素敵だなと思いました。同じようなものの組み合わには魅力を感じず、敢えて交わらない柄やシルエットを合わせて生まれる新しい世界を見るのが楽しいんです。だから今回、この2つのモチーフでよかったですし、いろいろと考えが膨らみました」と話し、自身とマリメッコとの共通点についてこう続けた。
「当時、現地でよく聞いたのが冬が寒くて疲弊してしまう土地柄で、家の中で幸せに暮らせるようにとインテリアが発展し、カーテンなどパターンにも華やかなものが多いんだよと。そう考えるとマリメッコの柄だけではなく、服にも地に根差した必然性があるように思います。その”生活を楽しくするための日常着”というアイデンティティは、僕のブランドでも大切にしていることです」。
1951年の創業以来、”目にするだけで力が湧く”大胆なプリントと色で日常を照らし続けてきたマリメッコ。富永のコレクションからも、その精神がしっかりと伝わってくるようだ。
「当時、現地でよく聞いたのが冬が寒くて疲弊してしまう土地柄で、家の中で幸せに暮らせるようにとインテリアが発展し、カーテンなどパターンにも華やかなものが多いんだよと。そう考えるとマリメッコの柄だけではなく、服にも地に根差した必然性があるように思います。その”生活を楽しくするための日常着”というアイデンティティは、僕のブランドでも大切にしていることです」。
1951年の創業以来、”目にするだけで力が湧く”大胆なプリントと色で日常を照らし続けてきたマリメッコ。富永のコレクションからも、その精神がしっかりと伝わってくるようだ。
マリメッコ コークリエイテッド
9月9日までは〈ドーバー ストリート マーケット ギンザ〉3階の限定ストアとDSMG E-SHOPでフルラインナップを先行発売。10日10時からはマリメッコ 日本公式オンラインで販売を開始する。

富永航
1988年、熊本県生まれ。武蔵野美術大学を経て、文化服装学院服、セントラル・セント・マーチンズ、チェルシー・カレッジ・オブ・アーツを卒業。2016年にイエール国際フェスティバルでグランプリを受賞し、パリの現代美術館パレ・ド・トーキョーのレジデンスプログラム「パヴィヨン・ヌフリズOBC」に参加した。2018年にはアジアを代表する30歳未満の30人」のアート部門に選出。2020年に自身初のコマーシャルライン「WATARU TOMINAGA」をスタートさせた。
