DESIGN
巨匠、オズヴァルド・ボルサーニを知っていますか?
『カーサ ブルータス』2018年8月号より
| Design | window on the world | photo_Max Rommel text_Kaoru Tashiro
〈Tecno〉社の創設者でありデザイナーのオズヴァルド・ボルサーニ。彼の初期作品に注目が集まる今、マエストロの全貌を明かす初の回顧展が開催中です!
4月に開催されたミラノデザインウィーク期間中、近郊のとある邸宅が特別公開された。1945年に完成した〈ヴィラ・ボルサーニ〉だ。施主はオズヴァルド・ボルサーニ(1911−85)。ハイテクなオフィス家具メーカー〈Tecno〉社創業者の家、というイメージを持っていただけに、邸宅に入った時の驚きは大きかった。彼自身が家を設計し、デザインした家具一式。アーティスト、ルーチョ・フォンタナが製作したという陶製マントルピースなど、凝りに凝ったインテリアの数々があり、芸術性と職人仕事に満ちた空間が広がっていたのだ。
彼のこの邸宅での仕事に心ざわめいていた折、ミラノトリエンナーレで『オズヴァルド・ボルサーニ展』が開幕。キュレーションを手がけたのは二人の建築家。〈Tecno〉社と協働したノーマン・フォスター、そしてオズヴァルドの孫、トンマーゾ・ファントーニだ。
会場にはオズヴァルドがデザインした家具300点以上! と、写真、スケッチなど500点を超える資料が公開されている。初の回顧展であり、作品を一堂に眺められる非常に貴重な機会だ。
会場にはオズヴァルドがデザインした家具300点以上! と、写真、スケッチなど500点を超える資料が公開されている。初の回顧展であり、作品を一堂に眺められる非常に貴重な機会だ。
オズヴァルドとは何者だったのか。展覧会から見えてくるのはアーティスト、建築家、職人の仕事とインダストリーをつないだデザイナー、そして1953年に〈Tecno〉社を設立した起業家、オフィスシステムにイノベーションをもたらした人物……。その全体像を俯瞰することは、彼個人の歴史を知るだけでなく、20世紀イタリアデザインの多様性を知ることでもある。デザインは、長い時間軸を通して眺めるときおもしろさが倍増する。そして今、彼の初期、モダニズムの作品に多くの人々が魅了されていることも興味深い。大量生産前夜のデザイン、もの作りのあり方に、時代は共鳴しはじめている。
『Osvaldo Borsani』展
〈La Triennale di Milano〉Viale Alemagna,6 Milano TEL39 02 724341。〜9月16日。10時30分〜20時30分(チケット販売は1時間前まで)。月曜休。入場料9ユーロ。

Osvaldo Borsani
1911年、ヴァレード(ミラノ近郊)で家具メーカーを営む一家に生まれる。53年〈Tecno〉社を双子の兄弟と設立。建築、インテリア、家具など総合的に手がけた。85年没。近年、その充実したアーカイブが完成。公式サイト
