DESIGN
皆川 明、西沢立衛も参加! ものづくりの真髄を伝えるブランド〈aemono〉。
August 21, 2017 | Design | casabrutus.com | text_Takahiro Tsuchida editor_Keiko Kusano
建築家やデザイナーが手がける特注家具のノウハウを生かし、独創的なアイテムを製品化する〈aemono〉。その最初の展示会が7月に開催された。実力派の作り手たちの“こだわり”の積み重ねが、家具シーンに新風を吹き込もうとしている。
日本ならではのものづくりの力を生かし、優れたプロダクトを量産するメーカーはいくつもある。しかし、東京発の新しいブランド〈aemono〉のラインアップを見ると、そこにはまだまだ未知の可能性があることに気づかされる。〈aemono〉の特徴は、あえて生産量の大小にこだわらず、使い手も作り手も十分に満足できるプロダクトを追求しているところ。草の根的なもの作りの醍醐味と、それぞれに道を究めた建築家やデザイナーの創造性をシンプルに融合するプロダクトは、いい意味で玄人好みの魅力をそなえている。
最初のコレクションを発表したばかりのブランドとは思えないほど、参加するデザイナーが大物揃いなのも〈aemono〉の特徴だ。妹島和世とのユニットSANAAとしても世界的に活躍する建築家の西沢立衛は、成型合板を使ったソファのプロトタイプを発表。有機的なフォルムの座面に、あえて節の目立つ桂むきしたヒノキを使い、自然そのままの表情を引き出すことにした。豊かな経年変化が生まれるように、表面もラフに仕上げている。そのため同じデザインでありながら、1台ずつ異なる個性をもつソファができあがる。〈aemono〉は必ずしも大量生産を前提としていないので、万人向けではない、実験的な要素を持つ家具も可能になる。
坂本一成は、教育者としても広く知られる建築界の重鎮で、世代を超えて信奉者が多い。彼による《BENCH 2016》は、自身で設計した東工大蔵前会館(2009年竣工)などのために制作したベンチを原型にしている。
フィンランド産のホワイトバーチの合板を水平垂直に組み合わせただけの作りだが、シンプルゆえに全体のバランスやディテールが重視された。建築の中で使い込まれ、親しまれてきた存在感の魅力をふまえて、今回の製品化が決定したようだ。合板の小口(断面)を見せるディテールも、坂本が1980年代に設計した住宅で用いた手法で、当時の日本の建築ではほとんど前例のない試みだったという。
家具デザイナーとして活躍する藤森泰司は、キッチンなどの下地材のパーティクルボードや化粧板の端材を天板とするテーブル《OVERRIDE》をデザイン。このアイテムの場合、端材のリサイクルでテーブルを作ることを当初からテーマとし、藤森を起用して製品開発が進められた。端材はサイズがバラバラなので、継ぎ合せるためのルールを決め、素材の風合いも生かして磨き上げている。「廃棄物を使っているという物語込みで選んでもらうのはいいけれど、そうでない視点で見ても『いい』と思えるものにしたかった」と藤森。素材の力がとても強いので、それに引っ張られすぎないバランスを意識して、脚部などがデザインされている。
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