布に宿る記憶を次に繋ぐ。韓国の縫製作家チェ・ヒジュの展示が東京・白金の〈YAECA HOME STORE〉で開催中。
| Design | casabrutus.com | text_Yoshinao Yamada
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韓国の伝統的な白磁をモチーフにした麻布の箱。もともとは生成りだった布を何度も洗っては日にあてて干し、太陽光で色を抜いたことでやさしい白にした。光とボリュームを含んだ器を作りたいとの思いから生まれたシリーズ。

韓国の伝統的な服にポケットはなく、チュモニという巾着を持ち歩く。それをモチーフにした小さなチュモニの作品。豊作の祈りを込めて王様が部下に赤い紙に包んだ大豆を渡したという昔話をモチーフに、チュモニのなかには3つの大豆を封入。「小さな福を重ねる」という祈りを込めている。

今回のために制作された 《毎日が満月》。母を想う気持ちが作品の原点にある。

母の友人が大切にしていた布を用いた作品。この薄く透けるような美しい布は、現代ではもう作れない貴重なものと崔。布自体に価値があり、手を加えるのは最低限に留めていると。シルクのように軽い器は、光を入れたいという。はなびらも同じ布のきれはしを使う。

日本の薄くて繊細な古い絹布を使って制作された箱形の作品。

モシの布に負荷がかからないよう、慎重に丸い綿を詰めて胴体を作り、青い糸で目と頭に刺繡を施し、尻尾は金糸で飾った《モシミョンテ》。布製のミョンテを作る人は増えたそうだが、崔はそれを作り始めた第一人者だという。

日本同様、韓国でも、寺院、海、山などで石を積む文化があるという。これをモチーフに「想いを積む」ことをテーマとしたオブジェ。7つの石は一週間を表し、1日ずつ積み上げながら「今日もいい1日となるように」と祈りを込めるものだと崔はいう。

重みを感じる黒の作品に対し、白はふわりと軽い印象をもつ。時間をかけて洗いざらした布は独特な質感。