DESIGN
《追悼ディック・ブルーナ》ミッフィーだけじゃない。ブルーナさんが残してくれたもの。
| Design | a wall newspaper | photo_Ikuo Yamashita text_Natsuko Kida editor_Kazumi Yamamoto
今年2月16日、D・ブルーナさんの訃報が飛び込んできた。『カーサブルータス 2001年7月号』のインタビュー時に語ってくれた彼の哲学を回想する。
「絵本作家ではなく、グラフィックデザイナーとしてのディック・ブルーナさんの取材を」という命を受け、ブルーナさんのアトリエを訪問したのが2001年の春。ちょうどユトレヒトのセントラル・ミュージアムで彼のペーパーバックの仕事を中心とした大きな展覧会を開催中で、その機会に、日本ではまだほとんど知られていなかった、彼のデザインの仕事について取材したのである。
ユトレヒトの市街地にあるブルーナさんのアトリエは、木の梁の見える、白と青を基調とした、機能的な仕事場と呼ぶにふさわしいスペースだった。いくつもの書架に整然と並んだ本。なかでも『ナショナル ジオグラフィック』誌と『グラフィス』誌のバックナンバーが揃っていたのには驚き、そして納得がいった。作画用のテーブルの上はピシッと片付いていて、鉛筆が長さ順に並べてある。
「整理整頓が大好きなんです」
ビスケットとお茶をいただきながらのインタビューは、たっぷり2時間半。あまりにも面白くて、時間が過ぎるのを忘れてしまった。彼がデザインした本の表紙を一緒に見ながら、ひとつひとつ、どのように考えて作ったのか、流暢なフランス語で語ってくれた。
「コラージュを多用したのはマティスが手がけた南仏ヴァンスの礼拝堂を見て、“これだ! この世界が好きだ”と思ったからです」
「グラデーションは嫌い(笑)。空は青、太陽は黄、とこないとね」
「整理整頓が大好きなんです」
ビスケットとお茶をいただきながらのインタビューは、たっぷり2時間半。あまりにも面白くて、時間が過ぎるのを忘れてしまった。彼がデザインした本の表紙を一緒に見ながら、ひとつひとつ、どのように考えて作ったのか、流暢なフランス語で語ってくれた。
「コラージュを多用したのはマティスが手がけた南仏ヴァンスの礼拝堂を見て、“これだ! この世界が好きだ”と思ったからです」
「グラデーションは嫌い(笑)。空は青、太陽は黄、とこないとね」
若い頃は画家を目指したが、戦時中は絵画に触れる機会はめったになく、戦後フランスに来て、マティス、ブラック、レジェ、クレーなどの近代絵画に感動したという。デザインは独学。パリの街で見たサヴィニャックの大きなポスターに感動し、商業美術にも惹かれるようになった。アートディレクターズクラブに参加し、ポール・ランドやソール・バスとも交流があった。オランダの「デ・ステイル」に参加していたユトレヒト出身の建築家リートフェルトについては偉大、と尊敬。彼にデザインを褒められたときは、嬉しくて雲の上にいる気分だったという。
「ダイレクトな表現で、シンプルに心を打つデザインを心がけています。本の表紙にはなるべく主人公を出さず、小説の空気、雰囲気を見せるようにしました。読者のイマジネーションの場を多く残したいのです」
「私の絵本はデザインの本でもあると考えています。常に構図に気を配っています。たまたま子供向けの本になっただけで、基本的には自分のために描いているのです。私がいつまでも4歳児のような部分を持っているからでしょうね」
大胆で朗らか、そして本質を直感的に捉えた、力強いグラフィックデザイン。ブルーナさん、たくさん残してくれて、ありがとう。これからも、私たちのデザインの師匠であり続けるでしょう。
「ダイレクトな表現で、シンプルに心を打つデザインを心がけています。本の表紙にはなるべく主人公を出さず、小説の空気、雰囲気を見せるようにしました。読者のイマジネーションの場を多く残したいのです」
「私の絵本はデザインの本でもあると考えています。常に構図に気を配っています。たまたま子供向けの本になっただけで、基本的には自分のために描いているのです。私がいつまでも4歳児のような部分を持っているからでしょうね」
大胆で朗らか、そして本質を直感的に捉えた、力強いグラフィックデザイン。ブルーナさん、たくさん残してくれて、ありがとう。これからも、私たちのデザインの師匠であり続けるでしょう。
シンプルの正体 ディック・ブルーナのデザイン展
ブルーナの仕事の軌跡を紹介する展覧会を開催。原画やスケッチなど約500点を展示。「シンプルの正体」を考察。4月19日〜5月8日。公式サイト
〈松屋銀座〉
