DESIGN
陶芸の里・唐津で訪ねるべき2人の女性作家【佐賀シティガイド】
May 21, 2023 | Design, Art, Food, Travel | casabrutus.com | photo_Satoshi Nagare text_Masae Wako editor_Akio Mitomi
「作り手8分、使い手2分」――なんだか気になるこの言葉。いったい何のことだろう? それは佐賀県の伝統工芸、唐津焼を表す言葉。つまり、料理を盛って使って初めて完成するのが唐津の焼き物というわけだ。今回訪ねたのは、その技を受け継ぎながら、今の暮らしに合う器を作る女性作家2人。工房で作品を直接購入できるのもうれしい!
●〈monohanako〉| 中里花子の自由でモダンな白・黒・グレー。
真っ白じゃない、とろんと滑らかで優しい白。白い器は世の中にたくさんあるけれど、「毎日、つい手に取りたくなるのは花子さんの白!」というファンを多く持つのが中里花子さんだ。唐津焼の窯元の家に生まれ、16歳で単身渡米。今は唐津市の見借(みるかし)とアメリカのメイン州に工房を構え、2拠点で作陶に励んでいる。
「私の器にはルールがないんです。屋号の〈monohanako〉には、“mono=ひとつの”という意味と、“物”という意味が込められています。カップでも皿でもなく“物”。使う人それぞれが、器を通して自分自身の楽しみを発見する。そういう存在であってほしいと思っています」
自由でのびやかな花子さんの器。そのルーツは唐津焼だ。唐津焼は16世紀ごろから焼かれ始めた佐賀県の伝統工芸。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に九州へ来た朝鮮陶工が轆轤(ろくろ)の技術を伝え、それを取り入れたことで大きく発展した。明治時代にいったん衰退しかけたものの、昭和初期に息を吹き返す。後に人間国宝となる陶芸家・中里無庵が、研究に研究を重ねて古い唐津焼の技法を復活させ、再び評価が高まったのだ。
その中里無庵の息子で〈隆太窯〉を開いたのが中里隆さん。今もレジェンド的な人気を誇る陶芸家で、花子さんの父であり師匠でもある。そんな花子さんに、器を成形するところを見せてもらう。全身の力をかけて練った土を轆轤の台に置き、ビュンと回しはじめると……は、は、速い! 土の塊が踊るように回転して伸びあがり、あっという間に器の形ができあがった。
「私の器にはルールがないんです。屋号の〈monohanako〉には、“mono=ひとつの”という意味と、“物”という意味が込められています。カップでも皿でもなく“物”。使う人それぞれが、器を通して自分自身の楽しみを発見する。そういう存在であってほしいと思っています」
自由でのびやかな花子さんの器。そのルーツは唐津焼だ。唐津焼は16世紀ごろから焼かれ始めた佐賀県の伝統工芸。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に九州へ来た朝鮮陶工が轆轤(ろくろ)の技術を伝え、それを取り入れたことで大きく発展した。明治時代にいったん衰退しかけたものの、昭和初期に息を吹き返す。後に人間国宝となる陶芸家・中里無庵が、研究に研究を重ねて古い唐津焼の技法を復活させ、再び評価が高まったのだ。
その中里無庵の息子で〈隆太窯〉を開いたのが中里隆さん。今もレジェンド的な人気を誇る陶芸家で、花子さんの父であり師匠でもある。そんな花子さんに、器を成形するところを見せてもらう。全身の力をかけて練った土を轆轤の台に置き、ビュンと回しはじめると……は、は、速い! 土の塊が踊るように回転して伸びあがり、あっという間に器の形ができあがった。
「土は生き物なので、こねくりまわすとすぐ弱っちゃう。土の力を生かすためにはスピード感が大事なんです」
陶芸を始める前はアスリートだったので、頭じゃなくて体でレスポンスすることが身についている、と花子さんは言う。
「轆轤を引く時も、自分のエゴをとりはらってスピードにゆだねると、無理のないラインが出るように思うんです。体が同じ動きを何度も何度も繰り返す、そこに自然と生まれ出てしまうもの、意図的ではない人間らしさみたいなものを大切にしたいと思っています。料理も同じですよね。いい料理人の包丁はいいリズムを刻む。素材を生かす仕事は、どこかで体の動きとつながっている気がします」
轆轤の基本は父の隆さんから学んだもの。スピードにゆだねるというスタイルも、花子さんなりの唐津焼の解釈だ。
「昔の陶工は、アートピースを造ろうとしていたのではなく、生活のための雑器を次から次へと大量に作っていたはず。だから作り手のエゴも凝った装飾もなくて、素朴な美しさに満ちている。私はそこにこそ、ものの良さやあどけなさがあると思っているんです」
陶芸を始める前はアスリートだったので、頭じゃなくて体でレスポンスすることが身についている、と花子さんは言う。
「轆轤を引く時も、自分のエゴをとりはらってスピードにゆだねると、無理のないラインが出るように思うんです。体が同じ動きを何度も何度も繰り返す、そこに自然と生まれ出てしまうもの、意図的ではない人間らしさみたいなものを大切にしたいと思っています。料理も同じですよね。いい料理人の包丁はいいリズムを刻む。素材を生かす仕事は、どこかで体の動きとつながっている気がします」
轆轤の基本は父の隆さんから学んだもの。スピードにゆだねるというスタイルも、花子さんなりの唐津焼の解釈だ。
「昔の陶工は、アートピースを造ろうとしていたのではなく、生活のための雑器を次から次へと大量に作っていたはず。だから作り手のエゴも凝った装飾もなくて、素朴な美しさに満ちている。私はそこにこそ、ものの良さやあどけなさがあると思っているんです」
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