DESIGN
ジョージ・ナカシマの工房を知っていますか?
June 3, 2022 | Design | 『カーサ ブルータス』2011年10月号より | photo_Naho Kubota text_Mika Yoshida & David G. Imber editor_Kazumi Yamamoto
ペンシルベニア州ニューホープ。伝説の家具デザイナー、ジョージ・ナカシマがこの地に工房を構えたのは80年近く前のこと。この工房をBTSのメンバーRMが訪問したり、この春に鎌倉山〈ink gallery〉で開催された展覧会も大盛況と、近年、ジョージ・ナカシマが何かと話題です。そこで、本誌『カーサ ブルータス』2011年10月号に掲載された「ジョージ・ナカシマの意志を継ぐ職人たちの理想郷」の記事を再掲載いたします。 ※本文中の年齢、時制などは掲載当時のままです。
ナカシマの工房に“個性”はいりません。しかし…。
午前10時。敷地に点在する工房から一人、また一人と職人の姿が現れる。ジョージ・ナカシマ・ウッドワーカーで唯一の日課、“朝の休憩”の始まりだ。木立の間を散歩する人、プールでひと泳ぎする人、剣道の稽古やヨガ、瞑想にふける人。早朝から制作に打ち込んでいた身体と心を、思い思いのやり方でリフレッシュさせること30分。その後は短い昼食をはさんで現場に戻り、木々に囲まれた景色を前にそれぞれの作業にいそしむのである。
午前10時。敷地に点在する工房から一人、また一人と職人の姿が現れる。ジョージ・ナカシマ・ウッドワーカーで唯一の日課、“朝の休憩”の始まりだ。木立の間を散歩する人、プールでひと泳ぎする人、剣道の稽古やヨガ、瞑想にふける人。早朝から制作に打ち込んでいた身体と心を、思い思いのやり方でリフレッシュさせること30分。その後は短い昼食をはさんで現場に戻り、木々に囲まれた景色を前にそれぞれの作業にいそしむのである。
木を磨き、魂を磨く。森の求道者たち。
アメリカ木工の父とあがめられるジョージ・ナカシマ。彼が生み出した家具は、20世紀工芸のひとつの頂点として世界的に高い評価を受けてきた。理由は、研ぎ澄まされた美しさや理にかなったフォルムにとどまらない。従来は木材としてハネられる、節やコブなどいわゆる“欠点”を持つ木から究極の美を引き出す、稀有な感性と技術力。ワシントン州の雄大な山々を駆け巡り、豊かな大自然と触れ合った少年時代の体験に根差す、樹木への深い畏敬の念。
木と対話し「木がなりたい形」ヘデザインするナカシマの哲学に魅せられ、自らの手で継承する人々は木工職人8 名と、仕上げ職人2 名の計10名。そのうち親方3 名は30〜40年以上勤める、いわば歴史の証人だ。ナカシマの感性と精神は、彼らによって次世代の職人へと確実に受け継がれている。
木と対話し「木がなりたい形」ヘデザインするナカシマの哲学に魅せられ、自らの手で継承する人々は木工職人8 名と、仕上げ職人2 名の計10名。そのうち親方3 名は30〜40年以上勤める、いわば歴史の証人だ。ナカシマの感性と精神は、彼らによって次世代の職人へと確実に受け継がれている。
自分の一品を作る、かけがえのない喜び。
日本やヨーロッバと比べ、アメリカはクラフツマンシップの伝統に乏しい。革新を良しとし、独創性を伸ばす国民性ゆえ、アルチザン(職人)ではなくアーティストを育むお国柄だ。最初は単純作業で修業を積み、親方の背中から教えを学ぶ徒弟制度や、デザインや手法を昔のまま遵守する意義をアメリカ人に理解させることの困難さ。それを踏まえ、この工房ではより良いやり方を常に採り続けてきた。クリエイティブディレクターを務めるナカシマの長女ミラはこう語る。
「最初はみなどうしても“自分流のナカシマ”を作ろうとします。が、ここの職人の使命は、あくまでナカシマを忠実に継承していくことにあるのです」
日本やヨーロッバと比べ、アメリカはクラフツマンシップの伝統に乏しい。革新を良しとし、独創性を伸ばす国民性ゆえ、アルチザン(職人)ではなくアーティストを育むお国柄だ。最初は単純作業で修業を積み、親方の背中から教えを学ぶ徒弟制度や、デザインや手法を昔のまま遵守する意義をアメリカ人に理解させることの困難さ。それを踏まえ、この工房ではより良いやり方を常に採り続けてきた。クリエイティブディレクターを務めるナカシマの長女ミラはこう語る。
「最初はみなどうしても“自分流のナカシマ”を作ろうとします。が、ここの職人の使命は、あくまでナカシマを忠実に継承していくことにあるのです」
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