DESIGN
アートディレクター・八木保が集めた、プルーヴェとペリアンの貴重な家具コレクションが、1冊に。
| Design, Culture | casabrutus.com | editor_Kazumi Yamamoto text_Takahiro Tsuchida
アメリカで活躍するアートディレクター、八木保は1980年代にジャン・プルーヴェやシャルロット・ペリアンの家具に出会う。やがてふたりの家具を次々に集め、世界的に見ても充実したコレクションができあがった。『CHARLOTTE PERRIAND and JEAN PROUVÉ・A COLLECTION of TAMOTSU YAGI』は、そんな貴重なピースを網羅した奇跡のような本だ。
フレンチ・ミッドセンチュリーとも呼ばれる20世紀半ばのフランスのデザインシーンにおいて、特に人気が高いデザイナーがシャルロット・ペリアンとジャン・プルーヴェだ。ともに近年は再評価が進み、多くの復刻版が流通する一方、ふたりの生前に製造されたヴィンテージ家具は数千万円で取引されることさえ珍しくない。しかし1980年代末、その家具に注目する人はほとんどいなかった。
当時、すでにアメリカ西海岸を拠点に活動していたアートディレクターの八木保は、パリを旅行した時にペリアンたちの家具を初めて知ったという。
「サンジェルマンのギャラリーで偶然もらったパンフレットで、画家のモンドリアンみたいな色を使った3本脚の棚を見かけて、絶対に欲しいと思いました」と八木さん。それはペリアンがデザインし、プルーヴェの工房で作られたものだった。アメリカに帰国した八木さんは、92年に同様の本棚を見つけてようやく手に入れる。それはアメリカのギャラリーから購入したが、以降はパリのギャラリストとも顔見知りになり、希少価値の高い家具に触れるチャンスが増えていった。
「ある時、パリの〈ギャルリ・ダウンタウン〉で何かおもしろい家具はないかとオーナーのフランソワに尋ねたら、20分後にもう1度来てほしいと言われました。その時間に行くと彼の自宅へ連れて行かれ、キッチンで見せてもらったのがプルーヴェの《Dr Vichard table》。フレームに蛍光灯がついていて、脚の上のスイッチを押すと明かりが灯るんです」
当時、すでにアメリカ西海岸を拠点に活動していたアートディレクターの八木保は、パリを旅行した時にペリアンたちの家具を初めて知ったという。
「サンジェルマンのギャラリーで偶然もらったパンフレットで、画家のモンドリアンみたいな色を使った3本脚の棚を見かけて、絶対に欲しいと思いました」と八木さん。それはペリアンがデザインし、プルーヴェの工房で作られたものだった。アメリカに帰国した八木さんは、92年に同様の本棚を見つけてようやく手に入れる。それはアメリカのギャラリーから購入したが、以降はパリのギャラリストとも顔見知りになり、希少価値の高い家具に触れるチャンスが増えていった。
「ある時、パリの〈ギャルリ・ダウンタウン〉で何かおもしろい家具はないかとオーナーのフランソワに尋ねたら、20分後にもう1度来てほしいと言われました。その時間に行くと彼の自宅へ連れて行かれ、キッチンで見せてもらったのがプルーヴェの《Dr Vichard table》。フレームに蛍光灯がついていて、脚の上のスイッチを押すと明かりが灯るんです」
90年代、パリの家具ギャラリーでは、そんなふうに今では考えられないような珍しいアイテムがしばしば取り引きされていたという。八木さんの知り合いだったファッションデザイナーのアズディン・アライアはじめ、こうした家具に注目するのは高度な審美眼をもつ人々に限られていたようだ。さらに八木さんの場合、仕事場や自宅に広いスペースがあったので、大型の家具を中心に集めていった。
「以前、パトリック(・セガン)のギャラリーに、建築家のノーマン・フォスターが買ったけれど部屋に入らなくて戻ってきたプルーヴェのテーブルが梱包されたまま置いてありました。飛行機のエンジンを組み立てるためのもので、全長は6メートル以上。そのまま僕が購入して、ガラスの天板を載せてスタジオで使っていました。たぶん世界で現存するのはこのひとつだけです」
書籍『CHARLOTTE PERRIAND and JEAN PROUVÉ・A COLLECTION of TAMOTSU YAGI』は、そんな八木さんが収集して手元に置いているペリアンとプルーヴェの家具を網羅した1冊。コロナ禍で生活のサイクルが変わったのをきっかけに、自身のコレクションの大半をあらためて撮影し、その大きさが伝わるようにレイアウトしている。また八木さんが特に惹かれるディテールは拡大して掲載し、細かくコメントを添えた。
「プルーヴェやペリアンの家具には、普段着のよさを感じます。きれいに保っておく家具というよりは、そのまま置いているだけで『いい』と思えるキャラクターがあるんです。だからずっと使っていても飽きません。僕はどの家具も、使うことを目的に、手に入りやすい時に買ってきました」と八木さんは話す。使い込んで塗装が剥げた様子にも魅力があり、撮り下ろしの写真でその表情の豊かさを伝えている。
「以前、パトリック(・セガン)のギャラリーに、建築家のノーマン・フォスターが買ったけれど部屋に入らなくて戻ってきたプルーヴェのテーブルが梱包されたまま置いてありました。飛行機のエンジンを組み立てるためのもので、全長は6メートル以上。そのまま僕が購入して、ガラスの天板を載せてスタジオで使っていました。たぶん世界で現存するのはこのひとつだけです」
書籍『CHARLOTTE PERRIAND and JEAN PROUVÉ・A COLLECTION of TAMOTSU YAGI』は、そんな八木さんが収集して手元に置いているペリアンとプルーヴェの家具を網羅した1冊。コロナ禍で生活のサイクルが変わったのをきっかけに、自身のコレクションの大半をあらためて撮影し、その大きさが伝わるようにレイアウトしている。また八木さんが特に惹かれるディテールは拡大して掲載し、細かくコメントを添えた。
「プルーヴェやペリアンの家具には、普段着のよさを感じます。きれいに保っておく家具というよりは、そのまま置いているだけで『いい』と思えるキャラクターがあるんです。だからずっと使っていても飽きません。僕はどの家具も、使うことを目的に、手に入りやすい時に買ってきました」と八木さんは話す。使い込んで塗装が剥げた様子にも魅力があり、撮り下ろしの写真でその表情の豊かさを伝えている。
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