DESIGN
水のような空気のような、書体設計士・鳥海修さんの文字。
『カーサ ブルータス』2022年3月号より
February 16, 2022 | Design | a wall newspaper | photo_Noriko Yoshimura text_Housekeeper
「ヒラギノ」「游書体」などの書体を手がけてきた、書体設計士・鳥海修さんの展示が開催中です。
iPhone、高速道路の看板、Word、そして『カーサ ブルータス』の本文。私たちが日常で何げなく目にする文字は、人の手によって一文字ずつデザインされている。その多くは書体設計士・鳥海修さんが関わったものだ。
現在〈京都dddギャラリー〉では鳥海さんの仕事を振り返る展示が開催されている。本文書体にこだわってきた鳥海さんは「水のような、空気のような」という展示タイトルが表すように、いつの時代も読みやすく、飽きられず、美しい書体の制作を試みてきた。
現在〈京都dddギャラリー〉では鳥海さんの仕事を振り返る展示が開催されている。本文書体にこだわってきた鳥海さんは「水のような、空気のような」という展示タイトルが表すように、いつの時代も読みやすく、飽きられず、美しい書体の制作を試みてきた。
「人の手でデザインする以上、文字には必ずその人の人間性が宿る。個性を抑えた文字を作るのはとても難しいが、そうして作られた書体がインフラとなり、文化の礎となる」という鳥海さん。展示では文字作りを米作りにたとえ、ヒラギノ明朝体の原字1980字が田んぼのように並んでいる。太さは異なるが、かつてスティーブ・ジョブズが自ら選んだmacOSとiOSの標準搭載フォントだ。
「2000年のApple新製品発表会で、ジョブズがヒラギノ明朝体W6の『愛』をスクリーンに映して一言『Cool』と声を上げたのは、昨日のように思い出せます」
現在、一つの書体で設計される文字は約2万3000字。それらをわずか4〜5人で分担し、一文字ずつ作る。特に仮名については手書き感を残すために細い筆でひたすら太さやカーブを整える手作業だ。中でも制作が難しい文字を尋ねると、意外なものだった。
「『麤』などの難読漢字と思われがちですが逆です。簡単なものほど難しく、特に『乙』『為』などは自由度が高くてやりがいがありますね。一番好きな字は『ふ』。4画に筆の運びがあり、空間の使い方が試されます」
「2000年のApple新製品発表会で、ジョブズがヒラギノ明朝体W6の『愛』をスクリーンに映して一言『Cool』と声を上げたのは、昨日のように思い出せます」
現在、一つの書体で設計される文字は約2万3000字。それらをわずか4〜5人で分担し、一文字ずつ作る。特に仮名については手書き感を残すために細い筆でひたすら太さやカーブを整える手作業だ。中でも制作が難しい文字を尋ねると、意外なものだった。
「『麤』などの難読漢字と思われがちですが逆です。簡単なものほど難しく、特に『乙』『為』などは自由度が高くてやりがいがありますね。一番好きな字は『ふ』。4画に筆の運びがあり、空間の使い方が試されます」
これまで100以上の書体を設計してきた鳥海さんだが、今後一つやりたいことがあるという。
「今、世の中には3000ほどの書体がありますが、それらをデザイナーがパソコンに入れても選びきれないんじゃないかと思うんです。結果適当に選ばれてもいいものはできない。それはタイプデザイナーの怠慢のせいだと思います。
だから使用サイズごとに基準となるような本文書体を作ってみたいです。まずはこれを使っていれば大丈夫というもの。それを基にもっと明るい、軽いなどイメージを決められる、ものさしのような書体群を作るべきだと思います。ただすべて一人で設計するとなると、僕は生きていない計算になるんですけどね……(笑)」
「今、世の中には3000ほどの書体がありますが、それらをデザイナーがパソコンに入れても選びきれないんじゃないかと思うんです。結果適当に選ばれてもいいものはできない。それはタイプデザイナーの怠慢のせいだと思います。
だから使用サイズごとに基準となるような本文書体を作ってみたいです。まずはこれを使っていれば大丈夫というもの。それを基にもっと明るい、軽いなどイメージを決められる、ものさしのような書体群を作るべきだと思います。ただすべて一人で設計するとなると、僕は生きていない計算になるんですけどね……(笑)」
鳥海 修
とりのうみおさむ 1955年生まれ。本文書体を中心に100以上の書体開発に携わる。著書に『文字を作る仕事』(晶文社)、『本をつくる』(共著、河出書房新社)など。
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