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アレッサンドロ・ミケーレの脳内を探訪する『グッチ ガーデン アーキタイプ』展へ|石田潤のIn The Mode
| Design, Art, Fashion | casabrutus.com | text_Jun Ishida editor_Keiko Kusano
2015年以降、クリエイティブ・ディレクター就任後のコレクションで、ファッションの流れを変えてみせたアレッサンドロ・ミケーレ。モードの世界にロマンティシズムを復活させ、いち早くジェンダーレスを打ち出した。アレッサンドロのクリエイティブ・ディレクター就任から6年、グッチがブランド創設100年を迎える今年、アレッサンドロが手がけてきた一連の広告キャンペーンの世界を振り返るエキシビション『グッチ ガーデン アーキタイプ』展が東京・天王洲で開催中だ。
広告キャンペーンは、デザイナーの世界観を凝縮したものだ。そのシーズンのインスピレーションソースやムードが一枚の写真、そして映像にギュッと詰め込まれている。とはいえ、主役はあくまで製品であり、その世界観は背景として現れる。『グッチ ガーデン アーキタイプ』展では、この世界観を抽出し、可視化することで、それを生み出したアレッサンドロの脳内を覗き見るような展示となっている。
スタートは、暗い部屋で複数のモニターが光を放つ「コントロールルーム」だ。モニターにはこれから展開する世界の基盤となる、コレクションの広告キャンペーンの映像などが写し出されている。そしてカーテンを抜けると、まず現れるのは、「Gucci Collectors」と名付けられたコレクターの部屋。壁を埋め尽くす鳩時計、ガラスケースいっぱいに詰め込められたぬいぐるみ……、これらは2018年秋冬コレクションの広告キャンペーンに登場したコレクターたちの品々だ。偏執的なまでのコレクションは、床と天井に張り巡らされた鏡によってさらに増幅し、万華鏡のような趣をみせる。
「もの」の力に圧倒された次に待ち受けるのはシンプルな空間。中央には現代アートのインスタレーションともつかぬ不思議なオブジェが置かれている。豊かなヘアと複数の手を持つそれは、突如動き出し、喜びの声をあげる。これは2020年春夏の広告キャンペーンの世界を可視化したものだ。映画監督のヨルゴス・ランティモスは、LAを舞台に馬と人間のシュールな交流を描いた。そう、この未知なる生物の柔らかなウェーブヘアは馬の尻尾。これは現代のケンタウロスなのだろうか?
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石田潤
いしだ じゅん 『流行通信』、『ヴォーグ・ジャパン』を経てフリーランスに。ファッションを中心にアート、建築の記事を編集、執筆。編集した書籍に『sacai A to Z』(rizzoli社)、レム・コールハースの娘でアーティストのチャーリー・コールハースによる写真集『メタボリズム・トリップ』(平凡社)など。
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