DESIGN
日本もうかうかしていられない!? シンガポール、最新デザイン事情。
July 4, 2014 | Design | a wall newspaper | text: Reiko Kasai editor: Yuka Uchida
クリエイティブデザイン産業の振興を国策として掲げるシンガポール。積極的な戦略が功を奏して、世界から熱い視線を浴びています。
SINGAPORE DESIGN WEEK 2014
MAISON & OBJET ASIA
NATIONAL DESIGN CENTER
来年建国50年を迎えるシンガポールは、小さな都市国家だけに、政府主導の計画に呼応する変化のペースも早い。中でも、国家のクリエイティブデザイン戦略が具体的な事業として始動しはじめて10年余り、その動きは海外からも大きく注目されている。
3月中旬、アートスクールの学生や若者であふれるブギスエリアに〈ナショナルデザインセンター〉がオープンした。120年前に修道院として建てられた白亜の保存建築をモダンに改修・増築した国営のデザインセンターは、デザイン・シンガポール・カウンシルの拠点であり、広いギャラリースペースやワークショップ空間を備えた総合デザインセンターだ。
当館のミッションは、国内のデザイン産業の振興と、デザインが触媒となって企業の付加価値と競争力を高める力を、一般企業に向けてアピールすること。後者の目的は、常に実利を追求するシンガポールらしい考え方だ。
そしてデザインセンターの開館時には『シンガポール・デザインウイーク』も同時開催された。2005年に始動したこのデザインフェスティバルは、初年に意欲を出しすぎたのか、その後息が続かず尻つぼみとなり、3回開催されたまま休止となっていたが、今回新たに拠点を構えたことで、仕切り直して再出発した形だ。以前のデザインフェスティバルでは、レム・コールハース、伊東豊雄といった大スターの名が並んでいたが、今回は、国内の若手の作家を中心に据えた展示が繰り広げられ、ローカルデザインのショーケースとプロモーションに重点を置いていることが感じ取れた。
そして、今年3月に開催された『メゾン&オブジェ アジア』。パリの国際見本市のアジア版の初開催とあって、近隣国から大勢の来場者が詰めかけ、熱気にあふれた。基調講演には、前回のパリでデザイナー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたトム・ディクソンが登場。この伝統を踏襲して、アジア版デザイナー・オブ・ザ・イヤーには、籐家具で知られるフィリピンのケネス・コボンプエが選ばれた。若い才能を発掘する「ライジング・アジアン・タレント」コーナーも注目を集め、この見本市が今後、シンガポールをゲートウェイとして新たなデザインの市場を活性化させていくことを予感させた。デザインウィークの一環として開催された国際家具展示会にも、日本も含めたアジア各国から集客があり、ハブ都市としての存在感も発揮している。
〝政府のお仕着せでクリエイティビティーを育めるのか?〟と疑問視する声はもちろんある。だが、国家のデザイン政策は教育にも反映され、2年前にはマサチューセッツ工科大学と提携した大学SUTDが開校。勢いは止まらない。
アジアの中での地理的な条件、英語が公用語であること、華人ネットワークなどが生かされ、建築デザインにおいてもシンガポールがトレンドセッターとなって、中国・インド・東南アジア諸国の建築プロジェクトに影響していることも見逃せない。
メゾン&オブジェは日本誘致の話もあったというが、主催者はシンガポールを選んだとか。アジア全体を視野に入れた戦略、国家の強い牽引力は、日本政府にももっと見習えるところがあるのでは?
3月中旬、アートスクールの学生や若者であふれるブギスエリアに〈ナショナルデザインセンター〉がオープンした。120年前に修道院として建てられた白亜の保存建築をモダンに改修・増築した国営のデザインセンターは、デザイン・シンガポール・カウンシルの拠点であり、広いギャラリースペースやワークショップ空間を備えた総合デザインセンターだ。
当館のミッションは、国内のデザイン産業の振興と、デザインが触媒となって企業の付加価値と競争力を高める力を、一般企業に向けてアピールすること。後者の目的は、常に実利を追求するシンガポールらしい考え方だ。
そしてデザインセンターの開館時には『シンガポール・デザインウイーク』も同時開催された。2005年に始動したこのデザインフェスティバルは、初年に意欲を出しすぎたのか、その後息が続かず尻つぼみとなり、3回開催されたまま休止となっていたが、今回新たに拠点を構えたことで、仕切り直して再出発した形だ。以前のデザインフェスティバルでは、レム・コールハース、伊東豊雄といった大スターの名が並んでいたが、今回は、国内の若手の作家を中心に据えた展示が繰り広げられ、ローカルデザインのショーケースとプロモーションに重点を置いていることが感じ取れた。
そして、今年3月に開催された『メゾン&オブジェ アジア』。パリの国際見本市のアジア版の初開催とあって、近隣国から大勢の来場者が詰めかけ、熱気にあふれた。基調講演には、前回のパリでデザイナー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたトム・ディクソンが登場。この伝統を踏襲して、アジア版デザイナー・オブ・ザ・イヤーには、籐家具で知られるフィリピンのケネス・コボンプエが選ばれた。若い才能を発掘する「ライジング・アジアン・タレント」コーナーも注目を集め、この見本市が今後、シンガポールをゲートウェイとして新たなデザインの市場を活性化させていくことを予感させた。デザインウィークの一環として開催された国際家具展示会にも、日本も含めたアジア各国から集客があり、ハブ都市としての存在感も発揮している。
〝政府のお仕着せでクリエイティビティーを育めるのか?〟と疑問視する声はもちろんある。だが、国家のデザイン政策は教育にも反映され、2年前にはマサチューセッツ工科大学と提携した大学SUTDが開校。勢いは止まらない。
アジアの中での地理的な条件、英語が公用語であること、華人ネットワークなどが生かされ、建築デザインにおいてもシンガポールがトレンドセッターとなって、中国・インド・東南アジア諸国の建築プロジェクトに影響していることも見逃せない。
メゾン&オブジェは日本誘致の話もあったというが、主催者はシンガポールを選んだとか。アジア全体を視野に入れた戦略、国家の強い牽引力は、日本政府にももっと見習えるところがあるのでは?