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盛岡、南部鉄器の工房〈釜定〉へ|行くぜ、東北。

| Design | sponsored | photo_Tetsuya Ito   text_Kei Sasaki   editor_Akio Mitomi

岩手県を代表する伝統工芸品で、世界的にも注目を集めている南部鉄器。盛岡市紺屋町にある〈釜定(かまさだ)〉では、昔ながらの製法を守り伝えると同時に、未来に生きるプロダクトとしての可能性を探るものづくりが行われています。

店内には鉄瓶のほか、手頃な価格で購入できる灰皿や栓抜きなどの小物、鍋やフライパンまで約300点の商品が並ぶ。鉄瓶は30,000円台から100,000円を超えるものも。現在、製造が追いつかず、購入は最低8か月待ちだという。
店内には鉄瓶のほか、手頃な価格で購入できる灰皿や栓抜きなどの小物、鍋やフライパンまで約300点の商品が並ぶ。鉄瓶は30,000円台から100,000円を超えるものも。現在、製造が追いつかず、購入は最低8か月待ちだという。
煮込み料理はもちろん、揚げ物から鍋物まであらゆる料理に使え、そのままテーブルに置いても器として映える。数多くの有名料理家が愛用することでも知られる木の取っ手が付いた《洋鍋》で、南部鉄器メーカー〈釜定〉の名前を知った人は多いだろう。生みの親は、南部鉄器の名匠で世界的なデザイナーとしても活躍する宮伸穂(みやのぶほ)さん。創業明治の南部鉄器メーカー〈釜定〉の三代目だ。
左から/《フライパン》(小)4,536円。《洋鍋》(中)5,940円。デザインはシンプルでモダン。きちんと手入れをすれば一生使える。1980年代に誕生して以来、愛され続けるロングセラー。
左から/《フライパン》(小)4,536円。《洋鍋》(中)5,940円。デザインはシンプルでモダン。きちんと手入れをすれば一生使える。1980年代に誕生して以来、愛され続けるロングセラー。
盛岡の南部鉄器は、南部藩主が京都から呼び寄せた釜師に茶の湯釜を作らせたのがはじまりといわれる。良質な原材料に恵まれたことに加え、藩が保護育成に努めたことで発展し、以来400年の歴史を刻んできた。南部鉄器を一般に広めたのが、18世紀に誕生した南部鉄瓶。茶釜を小ぶりにして使いやすく改良したものは、いま現在も南部鉄器を代表する製品だ。〈釜定〉は、明治時代に鉄瓶店として創業。伝統的なものづくりを継承しつつ、「洋鍋」のような現代の暮らしになじむプロダクトをヒットさせ、南部鉄器の魅力を広く伝える役割を担ってきた。
中央、神棚の下にあるのが坩堝(るつぼ)炉で、右端の四角い炉が量産品などに使用する高周波溶解炉。ほかに鉄瓶の製造に使う甑(こしき)がある。
中央、神棚の下にあるのが坩堝(るつぼ)炉で、右端の四角い炉が量産品などに使用する高周波溶解炉。ほかに鉄瓶の製造に使う甑(こしき)がある。
〈釜定〉の製品は、すべて店舗の裏手に建つ工房で作られる。量産可能な商品など、一部古くから付き合いのあるメーカーに製造を依頼するものもあるが、最終的な加工や組み立て、検品はすべて自社で行い出荷している。明治期に建てられた工房は、第二次世界大戦中に、いちどは解体されるが、終戦後すぐに元通りに組み直されて今日に至るまで現役。床は土間になっていて、砂で作る鋳型は役目を終えると割って地面に返される。商品が増えるにつれて設備を補強するたびに建て増しを繰り返し増床してきたため、全体は迷路のよう。机や椅子から小さな工具まであらゆるものが粉塵にまみれているが、全室内を覆う灰色の膜こそが長い歴史と受け継がれてきた技を象徴するかのようだ。現在、宮さん含め6人の職人がこの工房で仕事をしている。
デザインから起こした木型。呼び名は木型だが、木以外に鉄(写真)や樹脂、石膏などを製品に応じて使い分ける。
デザインから起こした木型。呼び名は木型だが、木以外に鉄(写真)や樹脂、石膏などを製品に応じて使い分ける。
鉄瓶の製造は、複雑を極める。デザインを木型に起こして鋳型を作り、鉄を流し固めて、着色する。言葉で説明するとシンプルだが、製品ごとに細部が異なるし、全工程に熟練の技を要する。〈釜定〉は、製造工程を分業化せず、ひとりの職人が全工程を手掛ける数少ない工房だ。「もちろん作業効率を計るうえで、分業を行う場合もある。けれど、全体を知っている者同士で役割を分け合うのと、その工程しかできない者が一工程を担うのでは、仕事が違ってきます」と、宮さんは話す。ひとりの職人が店頭に並ぶ商品を完成できるようになるまでには約10年かかるという。気が遠くなるような時間だ。
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