DESIGN
伊勢丹新宿店でトム・サックスの“商品”をお買い物|石田潤の In the mode
October 12, 2020 | Design, Art, Fashion | casabrutus.com | photo_Kenya Abe text_Jun Ishida editor_Keiko Kusano
トム・サックスの作品が“買える”展覧会、『トム・サックス:店舗体験』展が〈伊勢丹新宿店〉2階の「ISETAN THE SPACE」で始まりました。アート作品はもちろん、家具から雑貨まで、買い物心をくすぐる商品が揃います。
トム・サックスが〈伊勢丹新宿店〉をジャック!? トムにとっても初の試みとなる「小売りの体験」を総合的にデザインする展覧会、『トム・サックス:店舗体験』展が始まった。
「店舗体験」という名の通り、〈伊勢丹新宿店〉2階の「ISETAN THE SPACE」に設けられた展覧会会場すなわち店舗スペースは、空間デザインもトムによるものだ。トムの代名詞的素材である合板によって壁や什器が作られ、床はリノリウム風にグレーになっている。さらには「NASA」のロゴ入りレジを作り、スタッフにはオリジナルのスタッフTシャツ(もちろん販売も)を着せるという徹底ぶりだ。
「店舗体験」という名の通り、〈伊勢丹新宿店〉2階の「ISETAN THE SPACE」に設けられた展覧会会場すなわち店舗スペースは、空間デザインもトムによるものだ。トムの代名詞的素材である合板によって壁や什器が作られ、床はリノリウム風にグレーになっている。さらには「NASA」のロゴ入りレジを作り、スタッフにはオリジナルのスタッフTシャツ(もちろん販売も)を着せるという徹底ぶりだ。
会場に入ると、まず目玉商品のひとつである新作チェアが出迎えてくれる。イームズの《LCW》のトム・バージョンであるこの椅子は、脚と背面の骨組み部分のボコボコと円い穴の空いたデザインが特徴的。椅子に座ってみると、背もたれが身体に合わせて動く仕組みになっている。座り心地も抜群で、かつてフランク・ゲーリーの事務所で家具製作に携わったこともあるトムの実力発揮というところだろうか。横に置かれたラウンジテーブルの上には、トムの敬愛するイサム・ノグチの《AKARI》にオマージュを捧げる彫刻が置かれている。こちらも和紙のカバー部分には宇宙ロケットが描かれ、スタンドの脚はマキタの電動工具とバッテリーというトムならではのアレンジが加えられている。
商品はアート、家具、プロダクトの3つのジャンルで構成される。3ジャンルの商品は区分けされることなくディスプレイされ、見ている内に「これがアート作品」と特別視する意識も薄れてゆく。マルセル・デュシャンは便器を、アンディ・ウォーホルは複製したブリロボックスを「アート作品」として提示したが、トム・サックスはアートも椅子もTシャツも等価にディスプレイすることにより、「アート」の概念に揺さぶりをかけているのか、なんて考えがよぎりつつも、まずはショッピング。次々と商品を手に取る人々の熱気に包まれ、自分もいつしか鑑賞者から購入者へ。コロナ禍で忘れかけていたショッピングの楽しさが蘇る。
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石田潤
いしだ じゅん 『流行通信』、『ヴォーグ・ジャパン』を経てフリーランスに。ファッションを中心にアート、建築の記事を編集、執筆。編集した書籍に『sacai A to Z』(rizzoli社)、レム・コールハースの娘でアーティストのチャーリー・コールハースによる写真集『メタボリズム・トリップ』(平凡社)など。
