DESIGN
コロナ禍をきっかけに生まれた家具のセルフプロダクション。
August 12, 2020 | Design | casabrutus.com | photo_Masaki Ogawa text_Ai Sakamoto editor_Keiko Kusano
コロナ禍により、激変した私たちの日常。「新しい生活様式」の導入など、ドラスティックな変化が求められる今だからこそ生まれるものもある。家具デザイナー藤森泰司が立ち上げた〈WFH(WORK FROM HOME)〉プロジェクトもその一つ。新たな取り組みについて、彼に聞いた。
家具を中心に、空間やプロダクト、建築家とのコラボレーションまで、幅広いデザイン分野で活躍するデザイナー藤森泰司。「スケールや領域を超えた家具デザインの新しい在り方」を目指す彼が、コロナ禍を機に、企画デザインから販売までを一貫して手がける家具のセルフプロダクションプロジェクト〈WFH(WORK FROM HOME)〉をスタートさせた。
2回の試作を経て、7月に生産を開始した第1弾では、3タイプのデスクがお目見え。各タイプとも注文数が10台に達したら生産する受注生産方式を採用している。できる限り安価に提供するため、デザインや製作などにかかる費用を必要最低限に抑える工夫も。ハイエンドブランドともマスプロダクトとも違う、強いて言うなれば、その中間に位置する新たな家具とは?
2回の試作を経て、7月に生産を開始した第1弾では、3タイプのデスクがお目見え。各タイプとも注文数が10台に達したら生産する受注生産方式を採用している。できる限り安価に提供するため、デザインや製作などにかかる費用を必要最低限に抑える工夫も。ハイエンドブランドともマスプロダクトとも違う、強いて言うなれば、その中間に位置する新たな家具とは?
―英語で在宅勤務を意味する〈WFH〉を立ち上げた経緯を教えてください。
藤森 緊急事態宣言下の在宅ワークでの経験が大きなキッカケとなりました。社内のリモート会議で近況を聞くと「家が仕事できる環境にない」というスタッフが多く、中にはちゃぶ台や床にパソコンを置いて作業しているという人も……。そこで、自分たちにとって何が必要なのかを考えた結果、まずは各人の状況に応じたデスクという話になった。と同時に、僕らの必然性から生まれた家具は、他の人にも強くコミットできるかもしれない。それなら販売することを前提に、プロジェクトを動かそうということに。言わば、究極の見切り発車です(笑)。
―セルフプロダクションというスタイルを選んだ理由は?
藤森 セルフプロダクションなら、デザインする僕らと製作する工房という最小の単位で動けるので、スピード感があるというのが大きいですね。いろいろ環境を整えて動き始めると時間もかかるし、エネルギーも落ちていきますから。メーカーや販売店などの論理が入ってこないぶん、デザイナーも作り手も、(家具の)素材とシンプルに向き合って、どう形にしていくかを詰められたのもよかった。僕が考える〈WFH〉の魅力は、その昔、近所の大工さんにお願いして家具を作ってもらうくらいの気楽さ。試作品を見た時、家具と言うよりは道具や民藝みたいな、例えば機織り機のような印象を受けたのは、この気楽さや素朴さと僕らの必然性が結びついて生まれた“用の美”だからだと思っています。
藤森 緊急事態宣言下の在宅ワークでの経験が大きなキッカケとなりました。社内のリモート会議で近況を聞くと「家が仕事できる環境にない」というスタッフが多く、中にはちゃぶ台や床にパソコンを置いて作業しているという人も……。そこで、自分たちにとって何が必要なのかを考えた結果、まずは各人の状況に応じたデスクという話になった。と同時に、僕らの必然性から生まれた家具は、他の人にも強くコミットできるかもしれない。それなら販売することを前提に、プロジェクトを動かそうということに。言わば、究極の見切り発車です(笑)。
―セルフプロダクションというスタイルを選んだ理由は?
藤森 セルフプロダクションなら、デザインする僕らと製作する工房という最小の単位で動けるので、スピード感があるというのが大きいですね。いろいろ環境を整えて動き始めると時間もかかるし、エネルギーも落ちていきますから。メーカーや販売店などの論理が入ってこないぶん、デザイナーも作り手も、(家具の)素材とシンプルに向き合って、どう形にしていくかを詰められたのもよかった。僕が考える〈WFH〉の魅力は、その昔、近所の大工さんにお願いして家具を作ってもらうくらいの気楽さ。試作品を見た時、家具と言うよりは道具や民藝みたいな、例えば機織り機のような印象を受けたのは、この気楽さや素朴さと僕らの必然性が結びついて生まれた“用の美”だからだと思っています。
―企画から完成までにはどれくらいの期間がかかりましたか?
藤森 4月上旬からの在宅ワーク期間中に打ち合わせとデザインをし、1次試作ができたのが5月末。その後、6月下旬に完成した2次試作を経て、7月に生産に入りました。製作は、長年一緒に仕事をしているイノウエインダストリィズが担当。彼らが今回のプロジェクトに共鳴し、素早く動いてくれたのは大きかったですね。安価で販売するため、無理のない範囲ではありますが、費用面も努力していただきました。もちろん、デザイン料も必要最低限に抑えていますよ(笑)。
―3タイプ4種揃うデスクの特徴を教えてください。
藤森 すべてユーザーが自分たちで組み立てるノックダウン式。送料にかかるコストを抑え、状況に応じて分解するなど片付けやすいのが利点です。少しラフな印象の素材は、ラワン積層合板を採用。天板の表裏面には、ラワンの素材感に合うバッカー材(紙にフェノール樹脂を浸透させて積層させたもの)を貼っています。通常、これは板材にメラミン化粧板を貼る際に、板が反らないよう裏面に貼る素材です。また、ロットの違いによって生じるラワン合板の色のばらつきをコントロールするため、表面に薄くワックスを塗って仕上げていて、それがブラウンとホワイトの2色展開に。限られた空間で使うことを考えて、どのタイプも(天板の)寸法は幅も奥行きも約60cm。ノートパソコンを置いて、マウス操作ができるギリギリのサイズにしています。
デスクは、勉強や仕事をするための家具であると同時に居場所でもあると思っています。そこに座るだけで、日常の時間から少しだけ自分を切り分けることができる。例えば、お茶の好きな人ならお茶専用のティーテーブルがあれば、よりお茶に集中できますよね。そんな家具を考えられたらいいなと。
藤森 4月上旬からの在宅ワーク期間中に打ち合わせとデザインをし、1次試作ができたのが5月末。その後、6月下旬に完成した2次試作を経て、7月に生産に入りました。製作は、長年一緒に仕事をしているイノウエインダストリィズが担当。彼らが今回のプロジェクトに共鳴し、素早く動いてくれたのは大きかったですね。安価で販売するため、無理のない範囲ではありますが、費用面も努力していただきました。もちろん、デザイン料も必要最低限に抑えていますよ(笑)。
―3タイプ4種揃うデスクの特徴を教えてください。
藤森 すべてユーザーが自分たちで組み立てるノックダウン式。送料にかかるコストを抑え、状況に応じて分解するなど片付けやすいのが利点です。少しラフな印象の素材は、ラワン積層合板を採用。天板の表裏面には、ラワンの素材感に合うバッカー材(紙にフェノール樹脂を浸透させて積層させたもの)を貼っています。通常、これは板材にメラミン化粧板を貼る際に、板が反らないよう裏面に貼る素材です。また、ロットの違いによって生じるラワン合板の色のばらつきをコントロールするため、表面に薄くワックスを塗って仕上げていて、それがブラウンとホワイトの2色展開に。限られた空間で使うことを考えて、どのタイプも(天板の)寸法は幅も奥行きも約60cm。ノートパソコンを置いて、マウス操作ができるギリギリのサイズにしています。
デスクは、勉強や仕事をするための家具であると同時に居場所でもあると思っています。そこに座るだけで、日常の時間から少しだけ自分を切り分けることができる。例えば、お茶の好きな人ならお茶専用のティーテーブルがあれば、よりお茶に集中できますよね。そんな家具を考えられたらいいなと。
Loading...