DESIGN
陶芸家、青木亮が残したもの。
| Design, Travel | casabrutus.com | text_Hisashi Ikai
他界から15年。いまもなお多くのクリエイターに影響を与える陶芸家、青木亮の作品展が開催される。
2005年51歳の若さで早世した陶芸家の青木亮。没後初となる大規模な展覧会が、3月14日から〈愛知県陶磁美術館〉ギャラリーではじまる。粉引、刷毛目を中心に、焼締、白釉、鉄釉など、幅広い表現にチャレンジしながらも、最小限の土と釉薬を、窯の力を借りて、いかに満足の行く作品へと昇華していくか。ひたすらピュアな態度で自身の作陶のあり方を追求し続けた作家だ。
ときにうつわには品格が必要だと語り、気に入った作品は売らずに手元に残したという青木。作家としての名声や作品を売るための作陶には目もくれず、純粋にものづくりと対峙する青木の真摯な姿勢は、多くの作家にも影響を与える。
青木は、小野哲平、村木雄児といった同世代と交流を重ねては、陶芸と向き合う態度を何度も確かめ合ったという。さらに、長谷川奈津、内山亜矢子、田谷直子、吉田直嗣といった陶芸家のほか木工家の須田二郎にも多くの助言を残し、彼らが作家として活動する上で精神的なサポートを惜しまなかったメンターとしての役割も大きい。没後15年を経たいまでも、多くの作家から青木亮の名前を聞くのは、青木の熱く、豊かな人間性が人々の心のなかに確かに残っているからではないだろうか。
本展のキュレーションを行うのは鎌倉の〈うつわ祥見〉のオーナーでもある祥見知生。彼女がもっとも敬愛する作家とする青木亮の初期作品から、2005年に他界する直前まで窯に入っていた作品まで、全 100点を紹介する。展覧会の開催に合わせて、青木の工房に残されていた作品を3年間にわたり撮影し、葛西薫がアートディレクションを手掛けた作品集『AOKI Ryo』も刊行される。作品と向き合い、その静かな佇まいのなかに聞こえる、青木の力強い声にぜひ耳を傾けてほしい。

青木亮
あおき りょう 1953年神奈川県生まれ。78年創形美術学校版画科研究科卒業。85年愛知県立窯業訓練学校卒業、同年山梨県に工房を作り、作陶開始。89年神奈川県藤野町に工房を移転。97年穴窯を制作。2003年登り窯完成。2005年個展準備中に倒れ、急逝。享年51歳。
