DESIGN
世界遺産、博物館島に新たな玄関口が完成!
『カーサ ブルータス』2019年9月号より
| Design | a wall newspaper | photo_Shinji Minegishi text_Yumiko Urae
5つの美術館、博物館が集まるベルリン市内の世界遺産にチッパーフィールドの新建築が加わりました。
べルリン市内、シュプレー川の中洲にある世界遺産、博物館島に、デヴィッド・チッパーフィールドが手がけた新たな施設〈ジェームス・シモン・ギャラリー〉が完成した。ギャラリーの他に、ミュージアムショップなどを併設した島全体の総合案内所だ。
1830年、建築家カール・フリードリッヒ・シンケルが手がけた〈旧博物館〉から始まり、1900年代初めまでに5つの美術館、博物館が建設された博物館島。この歴史ある建築群に新たに加わるという難題に答えるため、チッパーフィールドはシンケルの弟子、フリードリッヒ・オーギュスト・シュテューラーに目をつけた。シュテューラーの建物でよく使われている回廊と柱を現代的に解釈し、この新たなランドスケープで表現したのだ。そう言われてみると、等間隔に並ぶ大きな柱と広い回廊は、材質やディテールは異なれど、ベルリン市内に多く残る新古典主義建築を連想させる。
また、内部はコンクリートを基調にしながらも、この地で出土した考古学的に価値のある木柱を大胆に配置したり、レザー、ガラス、鉄などの自然素材を多用したり、島内の建物に調和するための工夫が随所に隠れている。
「隣の〈新博物館〉の改築も含めると、博物館島の仕事に関わってから20年になります。ベルリンはかつて東西を分断された歴史がありますが、そこから学んだ教訓が根づき、パワーとスピリットのある街。観光客だけでなく、そんなベルリン市民にも愛されるような場所になってほしいです」
「隣の〈新博物館〉の改築も含めると、博物館島の仕事に関わってから20年になります。ベルリンはかつて東西を分断された歴史がありますが、そこから学んだ教訓が根づき、パワーとスピリットのある街。観光客だけでなく、そんなベルリン市民にも愛されるような場所になってほしいです」
今回の〈ジェームス・シモン・ギャラリー〉の完成は島の改革の皮切りにすぎず、今後、すべてのミュージアムを地下で繋ぐ計画もある。「完成までは、まあ、あと10年くらいかな」とチッパーフィールド。ベルリンにおける一大プロジェクトの過程を楽しんでいるようだった。
ジェームス・シモン・ギャラリー
博物館島の総合エントランスとビジターセンターを併設。Bodestr, 10178 Berlin。9時〜18時30分(木〜20時30分。カフェ〜23時)。特別企画以外は入場無料。

デヴィッド・チッパーフィールド
ロンドン出身。2012年第13回ヴェネチア建築ビエンナーレのキュレーター。2011年RIBAゴールドメダル、2013年高松宮殿下記念世界文化賞受賞。ベルリン、ミラノ、上海にも事務所を構える。
