CULTURE
【本と名言365】ルーシー・リー|「陶器を作ることは私にとって…」
September 16, 2023 | Culture | casabrutus.com | photo_Miyu Yasuda text_Mariko Uramoto
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。20世紀を代表する陶芸家ルーシー・リー。彼女の言葉には、生涯をかけて形態美を追求した表現者の強い意志と悦びが感じられる。
陶器を作ることは私にとって冒険である。新しい創作はすべて新しい始まりである。私は決して学ぶことを止めないだろう。
螺旋回転運動から生まれる形に特別な意味を見出し、生涯にわたって造形芸術を深めたルーシー・リー。ウィーン工業美術大学で陶芸を学び、無駄を削ぎ落とした造形を追求し、作家としての地位を確立。しかし、戦争の足音が忍び寄る1938年、ナチスの迫害から逃れるため、イギリスへの亡命を余儀なくされる。現地ではウィーン時代の活動は認められず、ファッション向けのボタンの製造に着手。多様な服に応じたボタン作りは、カラーテストを繰り返す作業につながり、知識を深める機会となった。その後、ハンス・コパーとの協業などで自身の造形を進化させていく。
ルーシー・リーの偉業が注目に値するのは、生涯を通してろくろによる造形方法を追求したこと、釉薬のバリエーションが豊富にあったこと、そして年代によってイメージを変えていく意匠の多様さにある。
たとえば、従来の工程に縛られず、素焼きを省いて生の器胎に施釉(せゆう)し、土と釉の溶融を一体化させて柔らかな表情を作品に与えたり。複数の色の粘土をろくろに重ね、そのままろくろ挽きして淡い螺旋状の文様を作る「スパイラル文」を生み出したり。ろくろ引きしたパーツを接合し、複雑なフォルムを生み出す「コンビネーション」、象嵌や掻き落としといった伝統的手法を取り入れて編み出した独自の文様、ぬくもりのある青やピンクの釉薬技法など、豊かな造形世界を繰り広げ、見るものを惹きつけた。作家としての評価が定まった後もルーシー・リーにとって陶芸は冒険であり、そのプロセスの一つ一つが新たな創作の可能性に繋がっていたのだ。
螺旋回転運動から生まれる形に特別な意味を見出し、生涯にわたって造形芸術を深めたルーシー・リー。ウィーン工業美術大学で陶芸を学び、無駄を削ぎ落とした造形を追求し、作家としての地位を確立。しかし、戦争の足音が忍び寄る1938年、ナチスの迫害から逃れるため、イギリスへの亡命を余儀なくされる。現地ではウィーン時代の活動は認められず、ファッション向けのボタンの製造に着手。多様な服に応じたボタン作りは、カラーテストを繰り返す作業につながり、知識を深める機会となった。その後、ハンス・コパーとの協業などで自身の造形を進化させていく。
ルーシー・リーの偉業が注目に値するのは、生涯を通してろくろによる造形方法を追求したこと、釉薬のバリエーションが豊富にあったこと、そして年代によってイメージを変えていく意匠の多様さにある。
たとえば、従来の工程に縛られず、素焼きを省いて生の器胎に施釉(せゆう)し、土と釉の溶融を一体化させて柔らかな表情を作品に与えたり。複数の色の粘土をろくろに重ね、そのままろくろ挽きして淡い螺旋状の文様を作る「スパイラル文」を生み出したり。ろくろ引きしたパーツを接合し、複雑なフォルムを生み出す「コンビネーション」、象嵌や掻き落としといった伝統的手法を取り入れて編み出した独自の文様、ぬくもりのある青やピンクの釉薬技法など、豊かな造形世界を繰り広げ、見るものを惹きつけた。作家としての評価が定まった後もルーシー・リーにとって陶芸は冒険であり、そのプロセスの一つ一つが新たな創作の可能性に繋がっていたのだ。
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