CULTURE
奥山由之の集大成に見る写真の新たな“関係性”。
『カーサ ブルータス』2022年3月号より
February 11, 2022 | Culture, Art | a wall newspaper | photo_Haruna Kikuchi (upper left, portrait) text_Mariko Uramoto, Housekeeper (caption)
広告写真やエディトリアルワーク、アーティストのポートレートなど、奥山由之のクライアントワークが一冊に。
デビューから12年にわたる膨大なクライアントワークをまとめた奥山由之の写真集『BEST BEFORE』が発売。この一冊に込めた思い、改めて気づいたことを聞いた。
Q タイトルを “賞味期限” と名づけた意味は?
クライアントワークは、創作物や被写体をベストなタイミングで人に伝えるという目的があります。広告だったら商品、ファッション誌だったら服が起点となり、それらをどう伝えると一番効果的かを重視する。つまり写真の力が最大限発揮される賞味期限があるということです。これは良い・悪いの話ではなくて、パーソナルな思想から出発する作品制作との大きな違いです。その特徴を捉えたタイトルにしたいと思いました。あと “これまでのベスト” と捉えてもらっても良いなと。
Q タイトルを “賞味期限” と名づけた意味は?
クライアントワークは、創作物や被写体をベストなタイミングで人に伝えるという目的があります。広告だったら商品、ファッション誌だったら服が起点となり、それらをどう伝えると一番効果的かを重視する。つまり写真の力が最大限発揮される賞味期限があるということです。これは良い・悪いの話ではなくて、パーソナルな思想から出発する作品制作との大きな違いです。その特徴を捉えたタイトルにしたいと思いました。あと “これまでのベスト” と捉えてもらっても良いなと。
Q アートディレクションは平林奈緒美さん。どのようなリクエストをしましたか?
ただ、アーカイブとしての機能を持っているだけではなく、どこかにユーモアを感じられる一冊にしたかった。それができるのは平林さんしかいない、と。出来上がった写真集を手に取ると、きちんと見やすいのに、文字ページは用紙の端ギリギリに文字組みがされています。平林さんの個性を感じるし、背表紙には賞味期限シールのようなスタンプが押されているなど、随所に可愛げも紛れています。写真のレイアウトは、僕がおおよそ組んで最後に平林さんに微調整してもらいました。
Q 自らレイアウトを組む上で意識したことは?
カテゴリーでまとめようと思えばいくらでもできますが、本としての充実感を感じてもらうためには、それぞれ独立した一枚の写真として見せる必要があると思いました。ジャンルや年代をすべて解体して、どの写真をどの順番でどう配置したら良いか、一から考えてレイアウトしました。大変な作業でしたがおもしろかったです。というのも、全く別の目的で撮った写真なのに見開きで並べた途端、あらかじめ隣り合うことを想定して撮られたんじゃないかと思うくらい関係性を感じるものがあったからです。これは写真という瞬間芸術ゆえの醍醐味だと思いました。
ただ、アーカイブとしての機能を持っているだけではなく、どこかにユーモアを感じられる一冊にしたかった。それができるのは平林さんしかいない、と。出来上がった写真集を手に取ると、きちんと見やすいのに、文字ページは用紙の端ギリギリに文字組みがされています。平林さんの個性を感じるし、背表紙には賞味期限シールのようなスタンプが押されているなど、随所に可愛げも紛れています。写真のレイアウトは、僕がおおよそ組んで最後に平林さんに微調整してもらいました。
Q 自らレイアウトを組む上で意識したことは?
カテゴリーでまとめようと思えばいくらでもできますが、本としての充実感を感じてもらうためには、それぞれ独立した一枚の写真として見せる必要があると思いました。ジャンルや年代をすべて解体して、どの写真をどの順番でどう配置したら良いか、一から考えてレイアウトしました。大変な作業でしたがおもしろかったです。というのも、全く別の目的で撮った写真なのに見開きで並べた途端、あらかじめ隣り合うことを想定して撮られたんじゃないかと思うくらい関係性を感じるものがあったからです。これは写真という瞬間芸術ゆえの醍醐味だと思いました。
Q 過去の作品を一冊にまとめてみてどう感じますか?
本当に毎回違うスタイルで撮ってきたんだなって。それができたのも衣装や美術、照明などのスタッフ、そして僕に仕事を依頼してくれた方たちのおかげです。クライアントとは時間をかけてディスカッションをします。お互い体力も精神も消耗しますが(笑)、それがないと納得できる作品にはなりません。写真家の独りよがりではなし得ない、人と人が気持ちを通わせて生まれた写真がこの一冊に詰まっていると感じました。
本当に毎回違うスタイルで撮ってきたんだなって。それができたのも衣装や美術、照明などのスタッフ、そして僕に仕事を依頼してくれた方たちのおかげです。クライアントとは時間をかけてディスカッションをします。お互い体力も精神も消耗しますが(笑)、それがないと納得できる作品にはなりません。写真家の独りよがりではなし得ない、人と人が気持ちを通わせて生まれた写真がこの一冊に詰まっていると感じました。
『BEST BEFORE』
2010年のデビューから2021年まで、12年間のクライアントワークをまとめた写真集。500ページを超える大ボリュームの決定版として、2月上旬に一般発売。8,800円(青幻舎)。