ART
伝説のレストラン〈FOOD〉に東京の料理人が思うこと。
『カーサ ブルータス』2018年9月号より
| Art, Food | a wall newspaper | photo_Yuko Moriyama text_Kei Sasaki editor_Yuka Uchida
ストリートカルチャーにおける「食」の可能性は? 多才な芸術家の展示会を紺野真さんと見に行きました。
現在、東京国立近代美術館で開催中の『ゴードン・マッタ=クラーク展』。1970年代を中心にわずか10年間、ニューヨークを拠点に活動し、35歳で夭逝したアーティストの名を、この展示を通じて知った人は多いはずだ。紺野さんは「僕はアメリカで大学に通ったので、美術の授業で《スプリッティング》を知ったときの衝撃は今も覚えています」と、話す。一軒家を真っ二つに切断する《スプリッティング》は、彼の代表作のひとつ。ほかにも人が住む場所、空間を題材にしたパブリックアート作品やプロジェクト、その記録の展示は膨大な点数に及ぶ。
アナーキーなようでいて、現実の事象に異なる視点を与えることで「関わり」を促すかのように見えるマッタ=クラークの作品。その象徴ともいえるのがアーティストのためのレストラン〈FOOD〉のプロジェクトだ。
アナーキーなようでいて、現実の事象に異なる視点を与えることで「関わり」を促すかのように見えるマッタ=クラークの作品。その象徴ともいえるのがアーティストのためのレストラン〈FOOD〉のプロジェクトだ。
スタッフとして、ゲストとして大勢のアーティストが集まったという伝説のレストランを、紺野さんは敬意を込めて「カフェの理想形」と呼ぶ。
「僕はカフェを作りたくて飲食店を始めた。カフェとは僕が思うに、食事を作り食べることを軸にした日々の営み、そこに集う人々の会話や交流といった“形のないもの”
が重要。その堆積が文化だから」
70年代の前衛的な試みは、決して過去のものではないとも話す。「今、このタイミングで回顧展が行われたことは偶然ではない気がして。食材や料理も飲食店も、町そのものさえも、ものすごい速さで消費され、形があるものは瞬く間に変容していく今の社会で、カフェを通じてできることを問われている気がします」
「僕はカフェを作りたくて飲食店を始めた。カフェとは僕が思うに、食事を作り食べることを軸にした日々の営み、そこに集う人々の会話や交流といった“形のないもの”
が重要。その堆積が文化だから」
70年代の前衛的な試みは、決して過去のものではないとも話す。「今、このタイミングで回顧展が行われたことは偶然ではない気がして。食材や料理も飲食店も、町そのものさえも、ものすごい速さで消費され、形があるものは瞬く間に変容していく今の社会で、カフェを通じてできることを問われている気がします」
『ゴードン・マッタ=クラーク展』
〜9月17日。約200点の作品・資料を紹介する大回顧展。〈東京国立近代美術館〉東京都千代田区北の丸公園3-1 TEL 03 5777 8600。10時〜17時(金・土〜21時)。月曜休(9月17日は開館)。

語ってくれた人 紺野真さん
こんのまこと 1969年東京都生まれ。三軒茶屋にあるワインバー&ビストロ〈uguisu〉と西荻窪〈organ〉のオーナーシェフ。ヴァンナチュールを軸に独自のスタイルで2軒を繁盛店に。18歳から10年間、ロサンゼルスに暮らした経験を持つ。
