ART
現代美術の人、村上隆は日本美術の人である。
December 19, 2017 | Art | casabrutus.com | text_Yoshio Suzuki editor_Keiko Kusano
村上隆はマンガやアニメを現代アートに解釈し直した(あるいはマンガとコラボした?)アーティストと思われているだろうか。それは作品の表面的な感想にすぎない。むしろ、村上の作品もマンガもアニメも同じルーツを持っているという言い方のほうが正しい。同じルーツ、それは日本美術である。
ボストン美術館で開催されている『村上隆:奇想の系譜|協力/辻惟雄、ボストン美術館』(原題:Takashi Murakami: Lineage of Eccentrics A Collaboration with Nobuo Tsuji and the Museum of Fine Arts, Boston)を見ていくと、マンガという日本が世界をリードする表現手法も、世界中の美術ファンから熱い視線を注がれる村上隆の作品もどちらも日本美術にその源流があるのではないかと思えてくる。ここではマンガのルーツ論はさておき、村上隆の作品と日本美術の名作を見比べるチャンスをこの展覧会から享受したい。
江戸時代の異端の画家たちを取り上げた美術史家、辻惟雄の名著『奇想の系譜』(1970年出版)の名を借りたこの展覧会。日本美術にインスパイアされた村上隆作品とそのもとになった日本美術作品との関係が明らかにされている。ものによっては並んで展示されていたり、類似作品が示されていたりする。
江戸時代の異端の画家たちを取り上げた美術史家、辻惟雄の名著『奇想の系譜』(1970年出版)の名を借りたこの展覧会。日本美術にインスパイアされた村上隆作品とそのもとになった日本美術作品との関係が明らかにされている。ものによっては並んで展示されていたり、類似作品が示されていたりする。
左右18メートルにもおよぶこの村上の大作の元となったのは円山応挙(1733-1795)や伊藤若冲(1716-1800)と同じ時代に京都で活躍した曾我蕭白(1730-1781)の《雲龍図》である。
実際の展示はこんな感じだ。蕭白の《雲龍図》右側のガラスに村上の《雲竜赤変図》が写り込んでいる。このように近くに展示されている。
村上が作品のテーマやインスピレーション元を日本美術に求めたことは初期からしばしばあったが、辻惟雄がお題を出し、村上隆が絵を描いてそれに応えるという「ニッポン絵合わせ」という2009年〜2011年の『芸術新潮』連載記事はまさに日本美術と村上隆の戦いの場となった。その記事は辻惟雄×村上隆『熱闘(バトルロイヤル)! 日本美術史』(新潮社とんぼの本 2014年)に一冊にまとめられている。
この、お題「曾我蕭白」のとき、辻はこんなことを書いている。
「蕭白の絵が、アメリカ人の眼、すなわち造形の好みに合っているのではないか、ということである。グラフィティ(落書き)は、いまや世界の大都市の壁を覆って社会問題となっている一方で[中略]現代ポップ・アートのルーツの一つとしても注目されているのだが、その本家本元はアメリカだ。アメリカのグラフィティを何度も見るうち私は、スプレーを駆使したその野暮で骨太の線、遠くからでも目立つよう配慮された逞しいヴォリュームの表現、表現における遊戯性の横溢、といった点で、蕭白の屛風絵との間に意外な共通性があると感じるようになった」
一方、辻惟雄『奇想の系譜』を手に取るきっかけはその本の装幀に使われたこの《雲龍図》だったという村上は書く。
「この作品の竜の、眉毛が寄ってて情けないような、、、。。。しかし、力強い、手のぐわし!状態とか。そして、背景の墨のだらぁ〜っとたらしたアブストラクトペインティング的なるなんともぶっちぎりな画面構成を見て、荒ぶる心を持った若い画学生、、、、って私ですが、、、にとっては、憧れのきらめきを持って妄想の世界に旅立たせてくれた作品でした」
そして、悩みに悩んだ末、村上隆の龍を完成させるのである。
この、お題「曾我蕭白」のとき、辻はこんなことを書いている。
「蕭白の絵が、アメリカ人の眼、すなわち造形の好みに合っているのではないか、ということである。グラフィティ(落書き)は、いまや世界の大都市の壁を覆って社会問題となっている一方で[中略]現代ポップ・アートのルーツの一つとしても注目されているのだが、その本家本元はアメリカだ。アメリカのグラフィティを何度も見るうち私は、スプレーを駆使したその野暮で骨太の線、遠くからでも目立つよう配慮された逞しいヴォリュームの表現、表現における遊戯性の横溢、といった点で、蕭白の屛風絵との間に意外な共通性があると感じるようになった」
一方、辻惟雄『奇想の系譜』を手に取るきっかけはその本の装幀に使われたこの《雲龍図》だったという村上は書く。
「この作品の竜の、眉毛が寄ってて情けないような、、、。。。しかし、力強い、手のぐわし!状態とか。そして、背景の墨のだらぁ〜っとたらしたアブストラクトペインティング的なるなんともぶっちぎりな画面構成を見て、荒ぶる心を持った若い画学生、、、、って私ですが、、、にとっては、憧れのきらめきを持って妄想の世界に旅立たせてくれた作品でした」
そして、悩みに悩んだ末、村上隆の龍を完成させるのである。
Loading...