ART
イタリア・ヴェネチアの建築を舞台に、安藤忠雄が曾梵志の作品を見せる。
『カーサ ブルータス』2024年8月号より
July 16, 2024 | Art, Architecture | a wall newspaper | text_Yoshinao Yamada
中国を代表する現代作家の曾梵志(ゾン・ファンジ)がヴェネチアで個展を開催中。話題を呼ぶ展覧会の会場構成を手がけたのは建築家、安藤忠雄です!
今年はヴェネチアビエンナーレの開催年。2年に一度行われる現代美術の国際展で、その会期は半年に及ぶ。同時期には実力派の作家が市内で展示を行うことも少なくなく、今年は中国を拠点とする曾梵志の個展『Near and Far/Now and Then』が話題を集めている。会場構成を行ったのは建築家の安藤忠雄だ。
1532年に着工した古典主義様式の建築〈スクオーラ・グランデ・デッラ・ミゼリコルディア〉を舞台にすることから「その長い歴史を受け継ぎながら、さらに500年先の未来へ拡張していくような人々の記憶に残る展示空間にしたかったのです」と、安藤は語る。曾は抽象と具象の両方を扱いながら、中国の古典絵画や西洋の現代美術に影響を受けつつ独自の表現を追う作家だ。本展では、光と水を緻密に描いた習作からドクロや仏教の石窟寺院のようなスピリチュアルなモチーフを幻覚的に描いた新作を発表する。これを受けて安藤は構成要素を最小限に抑え、光と影で曾の世界観と建築を呼応させた。
1532年に着工した古典主義様式の建築〈スクオーラ・グランデ・デッラ・ミゼリコルディア〉を舞台にすることから「その長い歴史を受け継ぎながら、さらに500年先の未来へ拡張していくような人々の記憶に残る展示空間にしたかったのです」と、安藤は語る。曾は抽象と具象の両方を扱いながら、中国の古典絵画や西洋の現代美術に影響を受けつつ独自の表現を追う作家だ。本展では、光と水を緻密に描いた習作からドクロや仏教の石窟寺院のようなスピリチュアルなモチーフを幻覚的に描いた新作を発表する。これを受けて安藤は構成要素を最小限に抑え、光と影で曾の世界観と建築を呼応させた。
安藤のファンだという曾は、安藤建築をどのような美術表現も受け止める存在だとし、存在感を示したかと思うと次の瞬間には消えてしまうところが魅力だと語る。対して安藤は「現代を描きながら中国の伝統に呼応する曾の絵画は深遠な奥行きを持つ」と評する。
本展における1階メインホールの展示を、曾は中国の山水画の多視点的な空間構成を思い起こさせるものだという。ホール最奥に展示される巨大な絵画ははるか彼方にある山のようで、その間の空間には何もない。一方で上層階は軸線上にパーティションを配置し、その開口部の大きさが変わることで西洋絵画のパースペクティブな構成を思わせるもの。曾はこうした安藤の空間を、曾の作品同様に洋の東西を統合するものという。
本展における1階メインホールの展示を、曾は中国の山水画の多視点的な空間構成を思い起こさせるものだという。ホール最奥に展示される巨大な絵画ははるか彼方にある山のようで、その間の空間には何もない。一方で上層階は軸線上にパーティションを配置し、その開口部の大きさが変わることで西洋絵画のパースペクティブな構成を思わせるもの。曾はこうした安藤の空間を、曾の作品同様に洋の東西を統合するものという。
Loading...