ART
“映画館”という場の持つ力を振り返る。アーティスト・志村信裕による、映画館の記憶をめぐる展覧会。
January 26, 2024 | Art, Culture, Design | casabrutus.com | text_Akio Mitomi editor_Keiko Kusano
開館20周年を迎えた〈山口情報芸術センター[YCAM]〉で、すべて閉館した山口市内の映画館にまつわる展覧会《Afternote(アフターノート)山口市 映画館の歴史》が開催されている。志村信裕がディレクションに携わったインスタレーションや新作映像には、映画館という場の持つ力が詰めこまれ、山口市に限らない普遍的な記憶を呼び覚ます。
映画館のない県庁所在地・山口市。かつて存在した10館以上の映画館に関する数々の資料集取や、200人を超える市民へのインタビューを丹念に行い、準備に2年以上をかけた展覧会『Afternote(アフターノート)山口市 映画館の歴史』が開催されている。会場の〈山口情報芸術センター[YCAM]〉は、市内で唯一、デジタル上映に加え35mmフイルムの上映も行っているアートセンターだ。今回の展示を担当した志村信裕が、映画館〈スカラ座〉(2012年に閉館)の映写技師から映写方法を習い、13年から15年まで上映に従事した施設でもある。
展覧会と志村の新作映像のタイトルに付けられた「Afternote」は、膨大な資料やインタビュー映像をどう構成するか悩んでいたときに降りてきた言葉で、本の「あとがき」のように、山口市にあった10以上の映画館の記憶を受け継ぐ展覧会にするという構想が一気にまとまったという。
「映画ではなく映画『館』の歴史を辿るために、かつての映画館での体験を重視しました。また〈山口情報芸術センター[YCAM]〉が美術館や博物館ではないスタジオ施設で、照明や音響のプロがいるからこそできる表現を試みました」と、展示の前提となった2つの点について志村は説明する。
「展示でフォーカスしたのは、芝居小屋での活動写真上映から弁士が活躍する無声映画が登場した戦前を経て、戦後の1960年代に全国の映画館数が7,000館以上と、ピークを迎えた時期の記憶です。その後テレビの普及により65年からの10年で約5,000館も減ったので、物心ついた頃にまだテレビがなかった人たちが映画館で映画を観ていた感覚を、現代の視点でどう解釈・編集するかということが重要な展覧会となりました」
「映画ではなく映画『館』の歴史を辿るために、かつての映画館での体験を重視しました。また〈山口情報芸術センター[YCAM]〉が美術館や博物館ではないスタジオ施設で、照明や音響のプロがいるからこそできる表現を試みました」と、展示の前提となった2つの点について志村は説明する。
「展示でフォーカスしたのは、芝居小屋での活動写真上映から弁士が活躍する無声映画が登場した戦前を経て、戦後の1960年代に全国の映画館数が7,000館以上と、ピークを迎えた時期の記憶です。その後テレビの普及により65年からの10年で約5,000館も減ったので、物心ついた頃にまだテレビがなかった人たちが映画館で映画を観ていた感覚を、現代の視点でどう解釈・編集するかということが重要な展覧会となりました」
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