
ART
ミュンヘンのナチス建築を霧で包む。霧のアーティスト・中谷芙二子の大回顧展レポート。
| Art, Travel | casabrutus.com | text_Megumi Yamashita editor_Keiko Kusano
ドイツ、ミュンヘンの〈ハウス・デア・クンスト〉で始まった『中谷芙二子展 NEBEL LEBEN』。「霧」の作品のほか、ビデオアートや初期の絵画など100点あまりを展示する国外最大の大回顧展になっている。
1970年の大阪万博ペプシ館に始まり、これまで世界各地で80点余りの「霧の彫刻」を展示してきた中谷。作品の性質上、いずれもランドスケープや建築との関係性から生まれるサイト・スペシフィックなものだ。
今回の展覧会場となる〈ハウス・デア・クンスト〉は、現代アートの展示では世界屈指の美術館だが、歴史を辿ればここは中谷が生まれた1933年に建設が始まり、1937年に開館した〈ドイツ芸術の家〉。芸術をプロパガンダに利用したヒトラーが、自ら指名した建築家を起用して建てられたもので、新古典主義的で威圧的なスケールなど、いわゆる「ナチス建築」を代表するものだ。
今回の展覧会場となる〈ハウス・デア・クンスト〉は、現代アートの展示では世界屈指の美術館だが、歴史を辿ればここは中谷が生まれた1933年に建設が始まり、1937年に開館した〈ドイツ芸術の家〉。芸術をプロパガンダに利用したヒトラーが、自ら指名した建築家を起用して建てられたもので、新古典主義的で威圧的なスケールなど、いわゆる「ナチス建築」を代表するものだ。
今年、89歳になる中谷だが、コロナ禍にあっても現地に足を運び、今展のために2つの霧の新作を制作している。ひとつは建物の東側の外壁の上部から吹き出される霧のインスタレーション《Munich Fog (Fogfall) #10865/II 》だ。シューッと音を立てながら噴霧される微小な水滴が、暗い過去を浄化するかのように、建物を霧のベールで包んでいく。
館内に入ると最初に聞こえてくるのが、日本の僧侶の読経。中谷が1979年に制作したビデオアート《總持寺》である。あたかも鎮魂歌のように館内にこだまする。禅僧が「雲水」とも呼ばれることは偶然なのだろうか。
館内に入ると最初に聞こえてくるのが、日本の僧侶の読経。中谷が1979年に制作したビデオアート《總持寺》である。あたかも鎮魂歌のように館内にこだまする。禅僧が「雲水」とも呼ばれることは偶然なのだろうか。
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