ART
レアンドロさん、この階段、いったいどうなってるの?
| Art | a wall newspaper | photo: Hiraku Ikeda text: Naoko Aono editor: Yuka Uchida
本物だと思ったら影だった。そんなトリックで楽しませてくれるエルリッヒの、日本初の個展開催中です。
びっくりさせて笑わせる“哲学的”なアート。
階段から落ちそう! でも大丈夫。これは金沢21世紀美術館の、水の下に人がいる不思議なプールで人気のレアンドロ・エルリッヒの作品。個展にはこんな、「?」が飛び交う作品が並ぶ。
「大人になるとものの見方が硬直化して何でもわかったような気になってしまう。予想しないことにびっくりすることで、ありきたりのものでも新しい発見ができる」
彼の作品は実体だと思うと虚像だったりと、現実とイリュージョンとの間を行き来するものが多い。
「僕たちは昔、太陽や星が地球の周りを回っていると思っていたけれど、あるとき自分たちの方が回転していることに気づく。プラトン哲学では影を実体だと思っている人々が語られる。僕たちは幻覚も含めて、自分たちが知覚したことを〝現実〟だと思っているんだ」
そんな哲学的な作品のアイデアは、普段の生活の中で思いつくことが多いという。
「哲学と日常生活は関係ないと思われているけれど、本当は日常生活の中に複雑で知的な哲学が存在している。僕の作品は毎日見慣れたものをもう一度じっくりと観察することから生まれてくるんだ」
子供から大人まで楽しく遊べるアートに、解けない謎に迫る思考の実験が詰まっている。
階段から落ちそう! でも大丈夫。これは金沢21世紀美術館の、水の下に人がいる不思議なプールで人気のレアンドロ・エルリッヒの作品。個展にはこんな、「?」が飛び交う作品が並ぶ。
「大人になるとものの見方が硬直化して何でもわかったような気になってしまう。予想しないことにびっくりすることで、ありきたりのものでも新しい発見ができる」
彼の作品は実体だと思うと虚像だったりと、現実とイリュージョンとの間を行き来するものが多い。
「僕たちは昔、太陽や星が地球の周りを回っていると思っていたけれど、あるとき自分たちの方が回転していることに気づく。プラトン哲学では影を実体だと思っている人々が語られる。僕たちは幻覚も含めて、自分たちが知覚したことを〝現実〟だと思っているんだ」
そんな哲学的な作品のアイデアは、普段の生活の中で思いつくことが多いという。
「哲学と日常生活は関係ないと思われているけれど、本当は日常生活の中に複雑で知的な哲学が存在している。僕の作品は毎日見慣れたものをもう一度じっくりと観察することから生まれてくるんだ」
子供から大人まで楽しく遊べるアートに、解けない謎に迫る思考の実験が詰まっている。
螺旋階段が横倒しに。
上の《階段》(2005年)を横から見たところ。螺旋階段が横倒しになっていて、本来なら壁になっているはずのところが床になっているので、人が壁を歩いているように見える。螺旋階段は垂直方向に付けられているという固定観念をひっくり返す作品。
気まずいエレベーター。
チン、と音がしてエレベーターの扉が開くが誰も乗り降りしない。思いがけず開いた扉の向こうでは気まずそうに下を向いたりケータイをいじったり。東京のエレベーターで、人々が欧米と同じ反応をすることから考えついた。《エレベーター・ピッチ》(2011年)。
風景を持ち歩けるガラス。
外から中をのぞいているはずなのに雪が降りしきる外の景色が見えて(右)、中から外を見ると暖炉がぱちぱちと音をたてて燃える室内が見える(左)。「風景を持ち歩けるような窓があればいいと思った」(エルリッヒ)のが発想のもと。《ログ・キャビン》(2009年)。Courtesy of Leandro Erlich Studio
INFORMATION
金沢21世紀美術館開館10周年記念展『レアンドロ・エルリッヒ -ありきたりの?』●
石川県金沢市広坂1-2-1 TEL 076 220 2800。〜8月31日。10時〜18時(金・土〜20時)。月曜・7月22日休(7月21日・8月11日は開場)。入場料1,000円。