ART
イサム・ノグチの“庭”を散策する展覧会へ|青野尚子の今週末見るべきアート
May 17, 2021 | Art, Design | casabrutus.com | photo_Takuya Neda text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
20世紀の造形芸術の巨人、イサム・ノグチ。建築家たちとも交流のあった彼の回顧展は、彼の作品で構成された庭のような空間です。石、金属、紙などさまざまな素材による彼の立体作品に囲まれる体験ができます。
日本人の父とアメリカ人の母との間に生まれ、幼少期を日本で過ごし、世界中を旅しながら制作を続けたイサム・ノグチ。東京・上野の〈東京都美術館〉で開かれている回顧展は、彼の作品が作り出す”森”か”庭”の中を散策しているような展示だ。
3つのフロアに分かれた会場の最初の部屋では、真っ先に《黒い太陽》が出迎える。《黒い太陽》は日本でイサムの右腕となって働いた和泉正敏との出会いのきっかけとなった作品だ。石工の3代目として生まれた和泉は石に関することはもちろん、イサムが香川県の牟礼に設えたアトリエ(現〈イサム・ノグチ庭園美術館〉)に滞在しているときの食事の手配など、生活全般にわたってイサムを助けていた。
《黒い太陽》の背後で室内を照らす「あかり」はイサムが1951年に来日した際、鵜飼いを見に訪れた岐阜で岐阜提灯と出合ったことから生まれた照明だ。イサムはこれを自身のライフワークとして30年以上にわたり、200種以上の「あかり」をデザインしている。このフロアでは大小150灯もの円形の「あかり」がインスタレーションされている。この「あかり」は15分ごとにゆっくりと点いたり消えたりを繰り返す。「あかり」の”森”の下には小道があり、「あかり」に囲まれながら歩いて行くことができる。
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illustration Yoshifumi Takeda
青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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