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展覧会史上初! 《鳥獣戯画》全巻一挙公開。「動く歩道」でゆっくり見よう!|青野尚子の今週末見るべきアート
April 23, 2021 | Art | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
うさぎや蛙や猿が相撲をとったり追いかけっこをしたり。擬人化された動物たちが動き回る800年前の楽しい絵巻《鳥獣戯画》。甲・乙・丙・丁の4巻からなるこの絵巻を、一度にすべて見られる空前絶後の展覧会が始まりました。しかも甲巻の展示は各場面を順に追える「動く歩道」つき! 前例のない展示の様子を紹介します!
これまでも何度か公開されている《鳥獣戯画》。ただしこれまでは作品保護のため、一度に一部しか見ることができなかった。2015年に今回と同じ〈東京国立博物館〉で開催された『鳥獣戯画 京都高山寺の至宝』展でも甲乙丙丁の4巻すべてが展示されたが、前期・後期に分かれていたため、コンプリートするには2度、行く必要があった。
『特別展 国宝 鳥獣戯画のすべて』展ではその貴重な《鳥獣戯画》四巻の全画面が一度に展示されている。各巻およそ9~12メートルの絵巻を端から端まであますところなく見ることができるのだ。その中でも、もっとも有名な甲巻は混雑緩和のため、「動く歩道」に乗って鑑賞する仕組みになっている。4巻全公開も「動く歩道」も《鳥獣戯画》展覧会史上、初めての試みだ。
『特別展 国宝 鳥獣戯画のすべて』展ではその貴重な《鳥獣戯画》四巻の全画面が一度に展示されている。各巻およそ9~12メートルの絵巻を端から端まであますところなく見ることができるのだ。その中でも、もっとも有名な甲巻は混雑緩和のため、「動く歩道」に乗って鑑賞する仕組みになっている。4巻全公開も「動く歩道」も《鳥獣戯画》展覧会史上、初めての試みだ。
2つに分かれた会場のうち、《鳥獣戯画》が展示されているのは第一会場の後半になる。少し高くなった細長いスペースに赤い手すりのついた動く歩道があり、その脇に甲巻が展示されている。「動く歩道」が終わって隣の部屋に向かうと「コ」の字型に設えられた展示ケースに乙・丙・丁の3巻が展示されているという構成だ。
かつては、《鳥獣戯画》の作者は鳥羽僧正という平安時代末の僧だとされてきたが、現在では宮廷絵所か寺院の絵仏師の手によるという説が有力だ。それもひとりではなく複数であり、描かれた年代も平安時代から鎌倉時代と幅があると考えられている。
この絵巻の特徴は「詞書(ことばがき)」がないこと。絵巻では普通、詞書=文章と絵が交互に表れて物語が語られるのだが、《鳥獣戯画》には文章がない。そのため、動物はもちろん人物もどこの誰なのかわからない。彩色がされていないのもこの絵巻の特徴だ。墨の濃淡だけで描く「白描」という手法がとられている。モノクロームであるにもかかわらず多くの人を惹きつけるのは、線に生き生きとした生命感があるからだろう。
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illustration Yoshifumi Takeda
青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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