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水平・垂直の線に隠されたモンドリアンの哲学|青野尚子の今週末見るべきアート
| Art | casabrutus.com | photo_Shin-ichi Yokoyama text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
きっちりとした水平・垂直のラインと赤・青・黄の三原色で構成された画面。彼の抽象画は周辺の人々が手がける建築やデザインにも影響を与えていました。日本では23年ぶりになる回顧展で、その関係性を探ります。
今回のモンドリアンの回顧展には「純粋な絵画をもとめて」というサブタイトルがついている。初期には具象画を描いていた彼がどのようにして「コンポジション」と呼ばれる後期の抽象画にたどりついたのか、また彼が考えていた「純粋な絵画」とはどんなものかを探る展覧会だ。
ピート・モンドリアンは1872年にオランダで生まれた。アムステルダムで絵画を学び、アカデミー修了後、同地でグループ展を開く。その展覧会に参加していたセザンヌやピカソの作品を見て、当時の芸術の中心であったパリへ行かなくては、との思いにかられ、1912年からパリにアトリエを構える。オランダでは伝統的な風景画などを描いていたモンドリアンだが、キュビスムに影響を受け、縦と横のラインで構成された絵を描くようになる。ただしモンドリアンの絵はキュビスムの単なる模倣ではなく、あくまでも彼オリジナルのものだった。
その背景にはモンドリアンが20代後半から関心を持っていた神智学がある。仏教やギリシャ哲学などを参照した神智学では、人間は物質的な肉体と魂、霊の複合体であるといった独特の思想体系を構築していた。モンドリアンは1909年に神智学協会に入会する。
1914年に友人に出した手紙で彼は「古代の建築こそもっともすぐれた芸術だ。水平・垂直によって調和とリズムを生んでいる」といった意味のことを書いている。またモンドリアンが傾倒した神智学研究者・スフーンマーケルスは「原始的なものから高次なものへの進化を垂直運動、原因と結果を水平運動とし、この二つの交差が宇宙の根源である」として十字形に特別な意味を与えていた。
1914年に友人に出した手紙で彼は「古代の建築こそもっともすぐれた芸術だ。水平・垂直によって調和とリズムを生んでいる」といった意味のことを書いている。またモンドリアンが傾倒した神智学研究者・スフーンマーケルスは「原始的なものから高次なものへの進化を垂直運動、原因と結果を水平運動とし、この二つの交差が宇宙の根源である」として十字形に特別な意味を与えていた。
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青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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