ART
青野尚子の「今週末見るべきアート」|記憶を呼び覚ますエンキ・ビラルの闇。
| Art, Fashion | casabrutus.com | photo_Ayumi Yamamoto text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
密度の濃い手描きの絵で紡がれる、メタファーに満ちた哲学的なストーリー。エンキ・ビラルのバンド・デシネ(オールカラーで描かれたフランスの漫画)はアートの領域にまで踏み込んでいる。近年は絵画に熱心に取り組んでいる彼の日本で初めての個展には、インスタレーション《INBOX》と新作の絵画が並ぶ。展示会場の最終チェックをしていたビラルに聞いた。
この個展は“闇”を体験する展覧会だ。会場にはもちろん、エンキ・ビラルの作品が並んでいるのだけれど、一定時間ごとに照明が消えて深い闇に包まれる。会場の大半は壁も床もまぶしいぐらいの白で覆われているから、暗闇の濃さが一際強く感じられる。
「暗くするのは見る人の記憶を人為的に喚起するため。照明を消して暗闇にする、つまり見ているときにその行為を中断すると、人はその前に何を見たのか、記憶が曖昧になる。人間は瞬きをすることで光と闇を自然に体験しているけれど、この展示では私がそれを強制的に行っているというわけだ。《INBOX》でも作品が展示されているスペースから出てくると、中に何があったのか思い出しにくい仕掛けにしてある」
「暗くするのは見る人の記憶を人為的に喚起するため。照明を消して暗闇にする、つまり見ているときにその行為を中断すると、人はその前に何を見たのか、記憶が曖昧になる。人間は瞬きをすることで光と闇を自然に体験しているけれど、この展示では私がそれを強制的に行っているというわけだ。《INBOX》でも作品が展示されているスペースから出てくると、中に何があったのか思い出しにくい仕掛けにしてある」
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青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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