ART
瀬戸内国際芸術祭 2019〈直島・沙弥島・女木島〉新作レポート
May 6, 2019 | Art, Travel | casabrutus.com | photo_Takuya Neda text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
毎回、新作アートが登場し、見どころがどんどん増えている『瀬戸内国際芸術祭』の春会期がスタート! 本記事では、直島・沙弥島・女木島の新作を中心に、知れば知るほど面白くなる、アートを支えるバックストーリーを紹介します!
瀬戸内海に浮かぶ12の島と高松・宇野の2つの港を中心に開かれる『瀬戸内国際芸術祭』。穏やかな内海と南の明るい気候の中、現代アートを楽しめる祭りとしてすっかり定着した。今回も前回2016年同様、春(〜5月26日)、夏(7月19日〜8月25日)、秋(9月28日〜11月4日)の3期に分けて開かれる。エリアによって3会期通じて展示されるものと1期のみ、または2期にまたがって展示されるものがあり、春・夏・秋それぞれに楽しめる。本記事では、春会期のみ開催となる沙弥島と、春、夏、秋を通じて展開する女木島・直島の、見逃せない新着アートを中心にピックアップ!
●沙弥島(しゃみじま)
2013年から『瀬戸内国際芸術祭』のエリアに加わった沙弥島はもともと島だったが、橋がかけられ、船に乗らなくても行くことができるようになったところ。高松から車で約40分、ここで真っ先に訪れたいのが西ノ浜にある五十嵐靖晃の作品《そらあみ〈島巡り〉》だ。砂浜に色とりどりの糸で編んだ網がかかっている。色は赤、青、黄、白、黒の5色、長さは約60メートル。正面から見ると青空にそれぞれの色が溶けていくようにも見える。この網は、瀬戸大橋がかかっている5つの島の人々に編んでもらった「漁網」だ。
「橋がかかって行き来は便利になったけれど、それまで島々を結んでいた定期船が廃止されたため、島の人々どうしはかえって疎遠になってしまったんです」と五十嵐はいう。定期船なら乗り合わせた人同士で会話もできるが、橋ができるとみんな自家用車で走り抜けてしまうからだ。
「橋がかかって行き来は便利になったけれど、それまで島々を結んでいた定期船が廃止されたため、島の人々どうしはかえって疎遠になってしまったんです」と五十嵐はいう。定期船なら乗り合わせた人同士で会話もできるが、橋ができるとみんな自家用車で走り抜けてしまうからだ。
網はそれぞれの島で作られて、最後に沙弥島の展示場所で「連結」した。編んでくれたのは漁師を中心とした人々。島外の人が島を訪れて一緒に編むワークショップも開かれた。編みながら、みんなが昔話をする光景も。島の年配の漁師は「網は人を寄せる」と言ったそうだ。編んでいる間に自然とゆるやかなコミュニティができる。「そらあみ」という作品名には「空がつながるように島もつながる」という意味を込めているのだという。
・旧沙弥小・中学校
沙弥島にある廃校になった「旧沙弥小・中学校」では校舎の内外でアートが出迎える。南条嘉毅は教室を改造、暗い中を進んでいくと次々とインスタレーションが現れる回遊式の作品《一雫の海》を作った。これは瀬戸内海で盛んに行われていた塩田をテーマにしたもの。沙弥島近くの坂出で育った彼も子供の頃、塩田跡の空き地で遊んでいたという。彼の曽祖母や親戚も塩作りに携わっていた。
彼の家の蔵にあった、塩作りに使われた水車も南条の作品の素材になっている。その先には天井から水滴が落ちてくるインスタレーションが。その下には鍾乳洞のように白い結晶が垂れ下がっている。水滴が染みこみ、地中で結晶ができたイメージだ。この作品には瀬戸内海で採れた塩のほか、海外の岩塩や塩湖で採れた潮も使っているという。
「塩を巡る歴史が層になっているようなインスタレーションです。同時に、日本と外国で採れた塩とがここで出合っている」(南条)
自然条件によってさまざまな形をとる塩は水と同様、私たちには不可欠なものだ。時代や場所によって少しずつ異なる塩と人との関係性がこの作品で複雑に絡み合っている。
「塩を巡る歴史が層になっているようなインスタレーションです。同時に、日本と外国で採れた塩とがここで出合っている」(南条)
自然条件によってさまざまな形をとる塩は水と同様、私たちには不可欠なものだ。時代や場所によって少しずつ異なる塩と人との関係性がこの作品で複雑に絡み合っている。
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